第8話 久々に笑う

数秒してお坊さんは口を開いた。

「………それは、災難でしたね」

お坊さんは続ける。

「まずは、ここまで夢を目標にしがみついてきたあなたを私は尊敬します。親も兄弟もいない中、よく頑張りましたね」

涙と鼻水が止まらない。

「それも、勉強を頑張るなんて何と素晴らしいこと」

「……へ?」

えっ?素晴らしいこと?

「いやー、すごいですね。基本的にほとんどの人間は勉強が嫌いなんですけどね。それを怠らず、夢にまで至るのはあなたくらいの年にしては大変立派で自立してます」

え?え?

「……ですが、身体が麻痺したからといって、勉強はできるんですよね?」

「……はい……」

「なら尚更問題ない。」

「…え?問題ない?」

「はい。因みに高校は進学校でしょうか?それとも普通?もしくはあんまり?」

「…いえ、進学校です。……自慢ではないんですが、昨年の全国模試では15位と」

「それはまあ!何と!全国の高校生で上位!いやはや、これは賢いという領域ではないですなあ」

ん?一体なぜこんなにも褒めるんだ?特段凄いことではないはず。

「そこまで勉強できるなら、むしろ希望に満ちてます。特に現代では」

「…希望に満ちている?」

「はい。実は最近やっと障害者でも働ける環境が整ってきたんですよ。もちろん身体だけじゃなく。昔ならどんなに頭が良かろうが何らかの障害を持っているだけで必ず差別されることが沢山ありました。それだけ日本は景気が豊かな分、柔軟性を失っていました。しかし今は、別です。特に貴方ならこのまま勉強を続けていれば、トントン拍子で政治家にだってなれますよ」

「そんな政治家だなんて……はは」

泣きは止み、いつの間にか気分良くなっていた。あれ?

笑ったのいつ以来だろ?

というか障害者でも働ける環境があること自体全く知らなかった。

「ふふ。充分あり得ますよ。さて今後どうすれば良いか、アドバイスします。」

思わず身構える。





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