傲慢軸 『満足な自死を求めて』

辻田鷹斗

プロローグ

夜空が綺麗な砂浜。変わらぬトーンで鳴らす波。潮風が柔らかに吹く。

「……これでいいんだ。これで。もう、何も残すことはない」

右手に握るカッターからジリジリと刃を立てていく。左手首に向けて思いっきり刃を一直線に入れて切る。

「くっ!いった!!」

鋭い痛みが左手首に集中する。痛みを抱えたままゆっくりと再び夜空を眺める。

(……ああ、星ってこんなにも美しかったっけ?色や星と星の距離が絶妙だ。いや、星だけじゃない。地球にある全てが奇跡的なほど秩序に張り巡らせれて、魅力的だったんだ。)

「……良かった」

ほっと頬を緩ませる。

興奮冷めやらぬまま手から流れた血を後になだらかな波へ浸かっていく。


さよなら僕。そして新たな魂へ。

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