第25話 空飛ぶ三鴉族
畏見の髷を結い直すと、采女たちは次の神の元へ旅立った。
毛羽毛現とゆめはみが玄関で見送っていた。
「次なる大神は、
ジャングルのような密林の中、草を掻き分けて進む。
信じられないほどの生命力に満ちた密林が視界に広がっていた。鬱蒼と茂る樹々は空を覆い、絡みつく蔦はまるで巨大な蛇のよう。足元は湿気を帯び、踏みしめる土からは、生い茂った草木が軋むような音を立てる。
一歩足を踏み入れるごとに、生き物の息吹と、異常なまでの熱気が肌に纏わりついた。禍創夜の力が暴走している証拠なのだろう。
草木の生い茂る場所から、一行は、開けた草地に出た。草地は短い草に覆われていて、何となく生暖かい。
空にふと影が指す。采女が上を向くと、大きな翼の影が空を横切る所だった。
「鳥……?」
「
猛雄がぼそりと呟く。
「三鴉……」
采女は目を凝らして三鴉の群れを見つめた。
「来ます」
ふと、畏見が囁く。群れの一匹が降下を始める。すると、次々に他の三鴉たちもそれに続きはじめた。
「うわっこっちに来る!」
「
三鴉たちが、開いた空から草地に舞い降りる。近くで見ると、結構大きい。みんな背が高く成人男性くらいはある。
からす、と名前がついてはいるが、その体はみな一様に極彩色の羽毛に覆われている。翼に生えた羽根は、全体的な青い羽毛基調に赤、黄、紫、様々な色が先端を飾っており、まるで極楽鳥のように美しい。
三鴉の一匹が、采女の方を向き、何とも優雅な仕草で頭を下げてお辞儀した。
その顔はへびくいわしに似て精悍だ。お辞儀した体が陽光に照らされ、キラキラと羽毛が滑らかに光る。采女はほぅとため息をついた。
「綺麗……」
「……お妃様、
お辞儀をしたまま言葉を述べる三鴉の長の前に、畏見が歩み出て言った。
「貴方がたが来ることは解っていました。面をあげなさい」
「予見のお力お美事にごさります。では、我々の窮状もご存じのことかと……」
「ええ、ある程度は知っていますよ」
三鴉が顔を上げる。畏見が一行を振り向いた。そして、悲し気に語り始めた。
「私の能力は、短い未来を見ることが出来る予見の力。その力が言っています。遠からずこの一族は滅びると」
「滅びる……!」
采女は息を飲んだ。三鴉たちが美しい翼を震わせて、盛んにクチバシを空へ向けた。嘆きの表現なのだろう。彼らの目尻には涙が浮かんでいる。
「彼らは
三鴉の長はうなずいて続けた。
「巣の変貌により、わたくしたちが守って来た大切な果実が実らなくなってしまったのです」
「風の果実、知恵の果実、美味の果実、彼らは、様々な果実を生活の糧として使ってきた。禍創夜の過剰な力の供給で、果実が腐れてしまったのです。このままでは遠からず、彼らは飢えて死んでしまいます、
「うん……!」
「一刻も早く、禍創夜の所へ参りましょう」
「我々がご案内いたします。お早く」
そう言って、三鴉たちが歩き始める。采女たち一行は、彼らについて歩き始めた。
一行が密林の奥へ足を踏み入れるごとに、周囲の生命力は一層荒々しくなっていく。地面から生え出した蔓植物は、踏みしめる足に絡みつき、頭上を覆う葉は、陽の光を完全に遮っていた。熱気と湿気が肌にまとわりつき、まるで巨大な生物の体内にいるかのようだ。植物たちは、異常な速さで成長し、互いを押し潰し、朽ちてはまた芽吹くという無秩序なサイクルを繰り返していた。
やがて、三鴉と采女たちは朽ちた神殿に辿り着いた。
「ここに……禍創夜がいるんだね」
「ああ……」
「な……何か、来ます」
言うや否や、何かが裂ける嫌な音が大きく響き渡り、空間が切り裂かれた。
紫色の禍々しい光がほとばしり、そひから髪切りがぬっと姿を現した。
「待ってたよ
彼は空間から飛び出すと、采女たちの前に立ちはだかった。
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