027 木漏れ日より
「いやあ、助かったよ。私だけじゃ制圧力に欠けててね、君がきてくれて助かったよ!君、仲間は?もしよかったら一緒に昼飯でも食べない?」
たくさんの植物の残骸を見下ろし、レイシャは問いかける。大勢の植物類の魔物と交戦していたレイシャに助太刀に入った、黒き肌に紫の髪、とんがった耳を持った少年。
所謂、ダークエルフと呼ばれる種族の者に。
「……俺に共に歩む仲間はいない。……もう戦火は消えただろう。お前のことは嫌いじゃないが、俺にもやるべきことがある。俺のことなど忘れて一人で喰らっていろ。」
「そこを何とか!ちょっと近辺の遺跡群を綺麗にするまで一緒に居てくれれば良いからさ!」
両手を合わせお願いするレイシャに、少年は酷く冷たい、うんざりした視線を向ける。
「あのなぁ……お前にはわからないだろうが本来俺は人前に出てくるような奴じゃねえんだよ。どっかに隠れ住むのが理想だ。そんな奴が人里でウロチョロしてみろ。奇異の目で見られるだろうが。」
「それに、あんたの仲間がそのうち来るだろ。一緒にやるってんならそいつらで良い。そうだろ?」
レイシャは、何だ知っていたのかと肩をすくめるも、決して言い負ける気は無いような、不敵な笑みを浮かべる。
「へえ、そうかい。残念だねえ。」
「ただ、気になることがあるんだよねえ。私の仲間にプリズマイト家の一人娘がいるとしても、同じ返答が帰ってくるのかってとこがね。」
「…………マリが。」
「あの娘、色々あったし、君も心配してたんだろう?なんてったって君とマリはもう破綻した契約とはいえ元々……。」
レイシャが言おうとした言葉に対し、少年は拳を燃やして威嚇する。
それは蒼き灼熱の炎、命すら焼く業火。魔法に秀でたエルフ種の中でもこれ程の、それもエルフ種と相性が悪い火属性の魔法を操る者は過去含めども彼のみ。
「…………あまり長居はしない。お前の仲間らの到着が遅いようならすぐに発つ。」
「……おや、やる気になったかい。いやあ、良かった良かった。君がいれば百人力だ。」
「頼りにしているよ、大精霊の巫女さん。」
「…………たくっ。お前が言うかよ、それ。」
蒼き炎は、まだ拳の中で燃えている。何があろうと、尽きることなき炎が、燃えている。
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