逃避行
傀儡
おはようございます
チリリ!チリリ!
少し小さめのアラーム音によって私は目を覚ます。
スマホに手を伸ばしアラームを止める。
ついでに時刻を確認すると時刻は4時35分。
布団から身を剥がそうとするも抵抗する身体。
1月の朝はどうしてこんなにもラスボス級のだろうか。
そうぶつくさ呟きながら私は荷物確認を行う。
荷物確認を終え、どこからか掻っ攫った水を手に取り私は家を出た。
彼からの連絡を確認するためスマホを開く。
時刻は5時ちょうど。
待ち合わせの場所に到着した。
辺りはまだまだ暗かった。
待ち合わせ場所には1台の軽トラがあった。
私は急ぎ足で近づき車内に入った。
暖房が効いていてとても温かかった。
「おまたせいたしました」
私はニコッと笑いながら彼に言った。
「全然平気!」
彼は日の出よりも眩しい笑顔でそう言った。
昔までならなんとも思わなかったのに、そう疑問に思いすぐ結論に達した。
今の私には雲がない。遮るものがないからこんなにも綺麗に見えるんだ。そう解釈した。
時刻は朝5時11分
彼はエンジンを入れアクセルを踏んだ。
重厚な音を響かせる軽トラ。
目的地はどこか遠く。
人目の付かないところまで。
私たちはこの小さい世界から抜け出し、大きな世界へと移る。
こんな所では息もしにくいし、13秒先すら見えないのだ。
そんな世界、私たちは嫌だった。
幼馴染の彼にそんなことを話すと、すぐに意気投合。
一緒に逃避行をすることとなった。
車の速度は段々と上がってゆく。
車内に響く音楽も音量を増してゆく。
彼は時折鼻歌交じりに運転していた。
2時間ほどし、出発地点からそこそこ離れた所で1度休憩を取った。
時間はたっぷりあるしね!
彼は少し眠そうにしていた。
ウトウトしながら。首を落としながら。
私は特等席でその可愛い横顔を見ながら、なんて幸せ者なんだと、そう思った。
30分ほど経ち、朝日が昇り始めた。
その光によって彼が目を覚ました。
少しボーッとした後に彼は
「行くか」
そう短い一言を発した。
それに私はタンマと言い、1度やって見たかったことをやってみることにした。
〜♪〜〜〜♪
車内は先程と同じように音楽が響いている。
疾走感があり、日の出をイメージする音楽。
車外にも聞こえるほどの音量だ。
私はそれに風切り音にも負けない疾走感を覚える。
目的地は未だに定まらない。
でもそれでいい。
彼と共に行けるならどこへでも。
私は今まで精一杯頑張ってきた。
期待も、評価も、態度も、姿勢も、成績も、何もかもを周りの望むままに応え、応じてきた。
少しくらい我儘な行動をとっても世界は許してくれるだろう。
これからは後悔なく生きていこう。
軽トラの荷台に尻もちをつきながら美しい空を見上げた。
膝を曲げ、脚を広げ、広げて開いたスペースに両腕を落とした。
運転席の彼から
「荷台に乗った感想はどうだい!」
と聞かれた。
風にも音楽にも邪魔されてると言うのに、1音1音はっきりと聞こえた。
特別大きい訳ではないはずの彼の声。
「最っ高!!!」
そう笑顔で叫びながら私は答えた。
逃避行 傀儡 @KuLAi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます