夢の終わりと幼年期の始まり
灰色セム
たとえそれが病気だとしても
2024年11月吉日。
私は精神病院に入院した。
原因は『食欲不振』だった。2週間食欲がわかなかった。水だけを飲み、鶏ガラの素を舐め、布団に潜り込む。これはよくないぞ、と買い出しに出かけたところで歩道に倒れ込んでしまい、夜勤明けの身内に車を出してもらった。
そうして翌日――。病院に無理を言って、急遽入院する。
誕生日を迎える4日前の、少し寒い日だった。
一般的に『精神病院』というと、患者がうーうー唸るとか暴れるとか、拘束されるとか。そんなイメージがあるかもしれない。私は自分の意志で入院したので『任意入院』扱いとなり解放病棟に入った。
解放と言っても精神病棟には変わりない。エレベーターは鍵のかかった個室にあり、階段も日中5時間使えるだけで、朝と夕方以降は施錠されていた。スマホとiPad Proの持ち込みを許可してくれた担当看護師には足を向けて寝られない。
――入院してからはご飯もモリモリ食べれるようになって、なんだか順調で、これならすぐ退院できると思っていた。私も、身内も、おそらく主治医も。
そうは問屋がおろさないのが人生である。
ストラテラを増やして少し経ったころから、私は幻聴に悩まされることになる。ひとりでいるときに「おい、おい、おい」と呼びかけられ続ける。誰かが歌っている。幻聴には意識を向けない、返事をしないのが鉄則だ。
気が滅入った私はスマホもiPad Proも触らず、人の多いホールで鬼滅の刃を読みつつ、お茶をパカパカ飲んで過ごした。鬼滅の刃を2周し終わったころ、ストラテラを減薬する運びになった。飲まなければ頭の中の騒がしさは取れない。
飲みすぎれば幻聴を誘発する。では中間あたりの量なら?
主治医の目論見通り、幻聴は治まり頭の中の騒がしさもいい感じに落ち着いた。そう。
落ち着いてしまった。
あれだけ創作のネタを産み出していた源泉が。
枯れてしまった。
私は子供のころから妄想するのが好きだった。頭の中はいつも賑やかでネタには困らなかった。
それは『自閉症』『発達障害(ADHD)』『軽度知的障害』のせいだったんですよ、と突きつけられた。
小説が、書けなくなった。
非常に落ち込んだ。日がな天井を眺める日々が続く。しかしここで諦めることはできなかった。
小説を書くのが好きだ。
イラストを描くのが好きだ。
少しだけボーカロイドにも挑戦している。
三つ子の魂百まで。ダンスフロアがなければ路上で踊ればいいじゃない。
さいわい、B型作業所で絵のお仕事はできている。福祉的就労なので、イラストレーターと名乗るのはこそばゆいのだけど⋯⋯。
2025年8月から、小説の方でも創作活動を再開する予定です。創作活動ぜんぜんしない期間を設けてみたんだけど、これがまァ~~味気なくって!堪えられないね!味のないガムに砂をまぶしたみたい!!そんな人生を送るくらいなら創る!!
――ということで、へたっぴでも病気があっても創作はするよ!って決意表明でした。
夢の終わりと幼年期の始まり 灰色セム @haiiro_semu
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