魔法が作る未来

モヤンやん

第1話 魔法と転生

「できた、本当にできた!」


 右手から火が出ている。五年ほど研究してきた“魔法”の発動に、ついに成功したのだ。


――人はときどき、自分でも驚くような力を発揮することがある。いつもより速く走れたり、普段なら持ち上げられない物を持ち上げられたり。


 その現象の原因を研究していく中で、体内を巡る“何か”の存在に気づいた。とはいえ、それは目に見えるものではなく、まるで空気のように感じられるものだった。


 その“何か”を、俺は“魔力”と名付けた。人は無意識のうちに魔力を使っていて、それによって普段はできないことができるのではないかと考えたのだ。


 魔力を別の用途に応用できないかと考え、魔力に関する様々な実験を始めた。


 最初に試したのは身体能力の強化。魔力を肩や腕、足腰など、必要な部位に集中させるイメージで、自分と同じくらいの大きさの岩を持ち上げてみた。


 魔力の扱いにまだ慣れていないせいか、岩の重みはかなり感じたが、なんとか持ち上げることに成功した。


 とはいえ、次はどうしようか。身体能力の強化は確かに便利だが、それだけでは革新的とは言いづらい。


 もっとこう‥魔力を体外に放出できれば、火を出したり、水を出したりできるかもしれない。そうなれば、人々の生活は劇的に変わる!


 こうして、“魔力を体外に放出する”研究が始まった。身体強化の研究は数カ月で完了したが、ここからが本番だった。


 体内にある魔力を外に出すという行為は、想像以上に難しかった。


 この研究に、さらに四年を費やすことになる。その過程で、新たな発見があった。なんと、大気中にも魔力が存在していたのだ。しかも、人体よりも遥かに高い密度で。


 俺が右手に魔力を集中させると、大気中の膨大な魔力がそこに集まってくる。この外部の魔力を利用できないかと考えた。


 大気中の魔力を別の物に変化させる。魔力は人のイメージで、動いたりするのでまずは、イメージから始める。


 風をイメージする。 ――変化なし。


 水をイメージする。 ――変化なし。


 火をイメージする。 ――熱い。ちょっ、熱い!熱いんですけど!? だけど…


「できた、本当にできた!」


 ――そして今に至る。


 とりあえず、これを“魔法”と名付けよう。今までの研究成果をまとめて、世界中の人々に広める。


――研究報告を終え、石造りの街を歩く。実際に、魔法が人々の生活にどれほどの影響を与えるかは分からない。だが、未来ではきっと魔法が使われているはずだ。


 なんとか、この目で魔法の未来を見てみたい。


 確実に人間に生まれ変われないかなあ。


 ん? もしかして、これも魔法でできるんじゃないか?


 こうして、“生まれ変わりの魔法”の研究が始まった。


――十年後。


「ちょっ、なんだこの光!? ちょっ、眩しいんですけど!!」


 まばゆい光に包まれ、意識が遠のいていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る