第2話見たの?
夕陽の差し込む階段を紗友里に手を引かれながら駆け上がる、端から見れば青春の一ページに見えるだろうが俺の心中はそれどころではない。
何故か持っている屋上の鍵を開けると勢いよく開く、冷たい風が頬を撫で寒さで震える。そんな雄一の鼻先に紗友里の指先が付きつけられた、さきほどの空き教室でのことが思い出し更に震えあがった。
「話してもらえるかな?」
「だから、パンツを」
「それはいいから、本当の目的と小鳥遊君の能力を説明してくれる?」
「いてっ!」
指先から小さな閃光が迸り静電気のような痛みが走る、可愛らしい笑う彼女はとても恐ろしかった。
「分かったよ、俺は……本当にパンツが見たかった!スカートの中はまさに聖域、それを暴くこの気持ちは男にしか分からないことだ!!」
まだまだ語りたいことは山のようにあったが、紗友里のゴミを見るかのような目で見降ろされそれ以上口にすることが出来なかった。
「それで……俺の能力は時間停止です、左目で範囲を指定したら何時でも1分間は3m×3mの範囲を時間停止させることが出来ます」
気がつけば正座をして敬語で話す自分がいた、冷たい視線に縮こまって震えているのは決して寒さのせいだけではない。
「一番気になるところなんだけど、青ランクの小鳥遊君が私を一時的とはいえ止められるなんてどういう事?」
「???」
紗友里は大きくため息を吐く、冷ややかな目から徐々に苛立ちが見え始めていた。真偽を確認するかのように見つめながら腕を組む。
「分かってないようだから言ってあげるけど、ランク差が大きいほど効果が弱くなるのよ?ましてや、青ランクの小鳥遊君が私に少しでも効果を発揮するなんてありえないわ」
「そうは言っても……」
上着のポケットから小さな小瓶を取り出す、日の光に反射する小瓶の中には小さな丸薬が3粒ほど入っており、紗友里はそれをカラカラと音を立てながら振っている。
「これに見覚えは?」
「なんかの薬か?」
「本当に?」
「腹の調子は悪くないけど」
「漢方薬じゃないわ!」
驚いた、おしとやかな紗友里から鋭い突っ込みが飛んでくるとは思わなかった。
少し照れた様子で顔を赤らめながらそっぽを向く。その瞬間風が吹く、夕陽の沈み始めた屋上でスカートが舞い上がる。
「これは!!」
無意識だった、舞い上がったスカートを見た瞬間に能力を発動していた、常識ではあり得ない舞い上がったままで停止したスカートと顔を赤らめながら驚いている紗友里の姿が目の前にあった。
しかし、それも長く続かなかった、能力発動から5秒も経たずに再び時間が動き出す。
「やっぱり!!何か仕掛けがあるでしょ!!ちょっとクレスタ見せて」
「クレスタ?」
「右手の宝石!!」
手を無理やり引っ張られると右手を確認される、普段は青く輝いていた右手の
次第にその輝きは失われ普段の青色に変わる。
「能力が進化する例はあってもこんな変化のしかた聞いたことない……」
「そう言われても知らないし」
「もう!面倒くさい!!ついて来て!!」
手を引かれ扉に向かう、扉の前で立ち止まり赤い顔で振り返る。
「見たの?」
「パンツか?非常に悔しいが西日でちゃんと見えなかった、一生の不覚!!」
「もうちょっとデリカシー持て!小鳥遊君はクラスだともっとこう……」
「暗いか?」
「そうね、あまり印象に残らない」
「簡単なことだよ、興味のある事には正直なだけ」
今日は珍しいことだらけだ、西園寺のこんな引き攣った顔を拝むことが出来るなんて一生に一度あるかどうかだ。
「それって」
「パン……ちょっおい!!」
「もういいわ!!」
言い切る前に室内へと引っ張り込まれる、日が沈み夜の訪れ始めた冷たい廊下を紗友里に引っ張られながら歩く、手の温もりを感じられ恥ずかしくなりながらも振りほどけなかった。
時間停止能力を使えたらやりたいこと! クロエナガ @konbukonbu
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