時間停止能力を使えたらやりたいこと!

クロエナガ

第1話まずはパンツ

 今、俺の目の前にはクラスのマドンナである西園寺紗友里さいおんじ さゆりが立っている。それも時間が停止した部屋で!!


 夕暮れの日が差し込む空き教室に舞った埃が空中に停滞し日の光が反射する空間には音すら聞こえない、そんな中に紗友里は棒立ちのまま微動だにすることはない。

 千人に一人の割合で現れると言う能力者に覚醒したのは2週間前だ。能力者は発現の兆候として右手の甲に2cmほどの宝石みたいなものが現れ、宝石の色ごとにランクが分かれている。最低ランクから白⇒緑⇒青⇒赤⇒黄と強力になっていく。

 ちなみに、俺のランクは青だ。


「よし、行くぞ……ぱ、パンツを見るぞ!!まずは一礼!!」


 勢い良く頭を下げる、これはパンツへの礼儀作法として考えて

て心がけていることだ。


「いざ!!」


 震える手が紺色のスカートへと伸びる、距離が縮まる度に心臓が五月蠅いくらいに高鳴っていた。

 スカートに指先が触れた瞬間に紗友里が僅かに震えた気がした。そんな筈は無い、部屋の壁に掛かる時計も舞い散る埃も確かに止まっている。


「気のせい……」


 今度は瞼が震えた、思い違いではない確かに動いている、そう思った瞬間に紗友里の体から炎が噴き出す。


「ま、まさか!」


 手の甲には何も無いことは確認済みだったはずだ、それが今は確かに金色の宝石が輝いていた。


「き、金色……なんで」


 硝子が砕けるような音が響いたような気がした。それを合図のように時間が再び進みだした、時計が再び動き出し埃が舞う中で紗友里の蒼い瞳がコチラをしっかりと見据え栗色の長い髪が揺らいでいる。


「君は、小鳥遊雄一たかなし ゆういち君?」

「覚醒?いや、それじゃ説明が……もう一度!!」


 時間停止を発動しようと意識を向けるがそれを阻むかのように体が痺れる、気がつけば紗友里の白い指が雄一の首筋に触れ小さな稲妻が飛んできた。


「体が……痺れて」

「ごめんね、ちょっと大人しくしてて」


 紗友里は白い指を自身の口元に当て考える素振りを見せた、こんな状況だと言うのに夕陽が彼女の髪を赤く染める姿が幻想的に映る。


「ねぇ?君は私になにをしようとしたの?」

「うっ、それは」


 言い淀んでいると顔を近づけて視線を合わせて来る、一方的に好意を寄せていた雄一にとっては嬉しい状況であると同時に非常に気まずい気持ちになってしまう。


「答えて」


 気まずさと同い年とは思えない圧力に屈し渋々口を開く。


「能力が覚醒したからノーカンに申請する前に西園寺のパンツを見ようと」


 本来、能力に覚醒した者は能力者管理委員会、通称ノーカンに申請をしなければならなかった。


 言葉にした途端に紗友里の顔は真っ赤に染まった、夕陽の赤さとは明らかに違うその顔色は徐々に怒りに変わり深呼吸を経て冷静を取り戻していく。


「相手が私で良かったよ、他の子じゃ何されるか分かった物じゃないから」


 その言葉に少しムッとする、俺にだってパンツ愛好家としてのプライドがある、パンツを見る以上のことをするなんて断じてあり得ないことだ。


「言っとくが!俺にだってプライドがある!!理解してもらう気は無いが」


 冷たい視線が突き刺さる、普段は愛想よく誰にでも優しい学園の女神とすら称される彼女からは想像もできない眼つきをしている。


「それより、西園寺は炎と雷の二重能力なのか?それって……」


 紗友里は自身の口に指を当てると微笑む。普段とは違う悪戯っぽい仕草にそれ以上の言葉は出なかった。


「秘密にしてくれるなら今回のこと水に流してあげる」

「分かった」


 腕を大きく広げると右手に炎、左でに雷を宿していた、揺らめく炎の光と雷の閃光は恐ろしい威圧感と神秘さを感じさせる。


「まさか……七聖守護者?」


 七聖守護者しちせいしゅごしゃ、第6のランクである金を持つ7人の能力者の事を言う。出身から年齢まで極秘として秘匿されてはいるものの、能力を悪用する者達と戦っているとの噂だった。


「そのまさかだよ?」


 微笑むその手には金色の宝石が光り輝いている、衝撃で散らばった椅子や机が散乱した空き教室の真ん中で佇む彼女の姿に息を飲むしかなかった。

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