第3話:犯人探し

 私は、自分のノートを開いた。

 三件の事件、発見日時、場所、被害者の名前、職業、年齢……。

 知り得る限りの情報を書き込んでは、線を引いた。


 接点があるようで、ない。

 それでも何かが引っかかる。

 最初の英語教師と、二人目のスーパー店員。

 同じ高校の卒業生。

 三人目の女性の名前を検索しても、経歴がほとんど出てこない。

 けれど、フェイスブックの投稿に「高校時代の親友だった子が亡くなった」と記されたコメントがひとつだけ見つかった。


 その高校の名前は、翠嶺(すいれい)高校。

 三人とも、その高校の卒業生。

 でも、それだけでは動機に結びつかない。


 「同級生だった?」

 「同じクラス?」

 「部活は?」

 情報は古く、ネットにも残っていない。

 私は図書館に行き、古い卒業アルバムを探した。


 翠嶺高校、20年前の卒業生。

 その名簿に、確かに三人の名前が並んでいた。

 しかし——その中にもうひとつ、見覚えのある名前を見つけて、手が止まった。


 香坂 玲(こうさか れい)。


 その名前を見た瞬間、なぜか背筋がぞっとした。

 なぜだろう。

 会ったことがあるわけじゃない。けれど、どこかで聞いた気がした。

 調べようとしたその瞬間——。


 パソコンの画面が、真っ黒になった。


 ブツッ。


 音もなく、電源が切れた。

 図書館のコンセントを確認しても、問題はない。

 「何これ……」

 まるで、誰かが調べるのを止めようとしているみたいだった。


 手がかりは、見つかったはずなのに。

 それ以上、追うことができなかった。

 犯人に、近づきかけていたのかもしれない。

 でも私はまだ——何も掴めていない。


 そして、金曜日がまたやってくる。

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