合格か失格か
KEIKO
プロローグ
希望を捨てた瞬間を覚えていますか?
ほとんどの人は覚えていない。
空気がゆっくり漏れていくみたいに、気付かないまま失われていくからだ。
スマホに届いた一通のメッセージ。
「おめでとうございます。あなたが選ばれました。」
奨学金だと言った。
失いかけたすべてを取り戻せるチャンスだと。
子供のくせに大人を演じて、眩しすぎる約束を疑いもせずに追いかけた。
まだ知らなかった。
あの「受け入れる」が、答えだとは。
質問すら気付かないまま、すでに問われていたことを。
そこにいたのは七十二人の私たちだった。
同じ制服を着て、同じ封筒を握りしめ、
同じ真っ白な廊下に並んだ。
ここが逃げ道だと思った。
実際は入口だったのに。
契約したと言われた。
けれど誰も小さな文字を読まなかった:
「支払いは心と真実と恐怖で完済されること。」
勉強では乗り越えられない試験へようこそ。
決して手にできない賞へようこそ。
命より高くつく奨学金へようこそ。
あなたなら、受け入れますか?
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