ハーレムの王子様

黒砂無糖

第1話

ここは、アレクサンディ山脈に連なる5国のうちの1番端にある国


ナトゥーア王国


通称「ハーレム国」


王族と高官はバチクソイケメンと傾国の美女揃いで有名だ。


比較的温暖な気候なので、皆肌の露出が高くドキドキしちゃう様な服を着ている。


通りを行き交う人々は一様に個性的でため息が出る様な美男美女だ。


愛と美の女神が守護するこの国では、水、空気、作物に至るまで、その力が溶け込んでいる。生活しているといつの間にか、女神の恩恵を受け、食事を通じて身体の内側から癒され美しくなり、善行を積み祈りを捧げ続けるとその者が望む容姿となる。


慈愛に満ちていて心が美しい程容姿が美しくなる。


神に美しくある事を望まれているこの国は、国をあげて芸術に、力を注いでいる。


全ての国民の才能を見抜き、有名な画家、彫刻家、音楽家、詩人、作家等、様々なジャンルの芸術家を国が保護し、育み後押しをして数多くの巨匠を排出している。


国内の女性は、独身者は望めば誰でもハーレムの住人になれる。住居はハーレムに移動するが、生活は自由で、芸術、事業を起こす事も可能だ。


成人男性は皆ハーレムの従僕になる事は義務ではあるが、1日平均5時間仕事をすれば良く、ひと月の就業時間が満たされているなら出勤時間と日数は自由だ。副業も認められていて、空いた時間に各々の得意とする芸術活動や事業をしている。


大まかな芸術活動の流れは国が定めているので、それぞれの活動時期が重なる事は無い。

従僕達は皆同じ条件なので、持ちつ持たれつで特に不満もでない


芸術活動に重きを置いているので、創作活動が佳境に差し掛かって入る時や、遠征中はハーレムの仕事は免除される。


国が運営している音楽団、歌劇団、大衆劇団等は国を超えて絶大な人気があり、国は莫大な資産を持っている。


自由恋愛も認めている国なので、婚姻制度があるにはあるが、あまり機能していない。

男女共に利益がないのだ。


ハーレムの女性と従者が良い関係になるなど日常茶飯事だし、子が出来たら国が運営するハーレムの皆で育てるので不安はない。


ハーレムで生まれた子達は王族の子かもしれないし、違うかもしれない。


ただ、王族の血を引く子供は10歳過ぎると神の力が働くのか、はたまた人間性か、明らかに目を引く容姿となる。なので国民は誰が王族か直ぐに分かる。


貞操観念が崩壊している事だけが唯一の欠点かもしれない。


来る者拒まず去る者追わず。

この国は、挨拶と共に必ず褒めるし口説く。

相手を気分良くさせる事、喜ばせる事が女神が求める善行なのだ。


いつだって出入り自由な国だが、来国者は一度滞在すると幸せな気分と居心地の良さ、自己肯定感も高まるので、皆口を揃えて帰りたくないと言わせてしまう。


多種多様な美男美女が、望む言葉をくれて口説いてくるので、良好な関係の他国高官からは「ハニトラの国」という異名で呼ばれているが、住人は気にしていない。


一方あまり良く内情を知らない国からは


「人攫いの国」と呼ばれ、

「色狂い王族」と蔑まれる。


ナトゥーア王国には、スカウトマンと呼ばれる10人がいる。彼、彼女らは国内で容姿、人間性、実力を兼ね備えた人気の高い男女の希望者からなるスカウトチームだ。


各国に足を向け、ナトゥーア王国に見合った原石達を見つけてくる。


巨大なハーレムを築き上げたその国の現在の王様は、歴代一番の美貌を誇り、国中の民から愛されている。


歳の頃は中年に差し掛かっているが、その容姿は男女問わず魅了するほど色気があり魅力的で未だ現役だ。


精力的にハーレムで美男美女と戯れたがら、今日もせっせと子作りではなく執務に励む。


「この度、北のエードラント国から総勢28名が移動します。内19名はハーレムの補充要員となります。一度お目通りください。

まだ他にも居るかもしれないので引き続き別の者を派遣しました、追って報告します。」


スカウトマンが新たなハーレムの住人の追加を伝えた。


「エードラントに金を払って来たのか?後で返せと言って来ても返さない事の了承の印もちゃんとあるな?レディ達は今から風呂に入れ隅々まで磨くが良い。後からハーレムへ向かう。本人に希望はどの様なものかしっかりと聞いておく様に」

王は指示を出し、執務の続きに戻る


「また、ハーレムに歳若い原石達が増えるのねぇ私も頑張らなきゃ貴方に相手して貰えなくなっちゃうかしら?」


スルリと頬を撫でて膝に座ってくるのは7歳でハーレム入りしたクルーク、数字と歴史に強い才女。言うまでも無く美女だ。


「クルーク、君はいつだって素敵だ、 今も私を虜にしているよ?今回の補充でも君の眼に適うものがいるか見てくれるかい?」


「ケーニッヒ様クルークだけで無くて私達もお忘れにならないでくださいましね?」


部屋に居る美女達が次々と頬にキスをしてそれぞれの仕事に戻る。


クルークも「皆で新しい原石を一緒に見に行きましょう」とクスクス笑いながら席に戻った。


従僕達は女官と対となり女官の補佐をしたり相談に乗ったりしながら仕事をしている。


こちらにキスしに来て席に戻った女官を軽く抱きしめ何かささやき席に促す。


スキンシップがかなり過剰な職場だ。


挨拶にキスとハグは当たり前で男女問わず。

移動で肩が当たればハグとキスをして離れ、

何かお願いしたりされたりしてもお礼にハグとキス。

執務室には常に愛が溢れている


「各々今手やっている業務に区切りが付いたらハーレムに移動しよう」

皆集中してこの日は早く終わった。


王宮に隣接しているハーレムは、中央に豪華な噴水があり、色とりどりな花が咲き誇る手入れの行き届いた広場が広がっている。


部屋から、その景色をいつでも楽しめる様、ぐるりと囲むように宮殿が1つの街の様に大規模に作られている。


宮殿内には、学舎、食堂、湯殿、医局、コンサートや、演劇、会合も出来る多目的ホールもあり施設としてかなり充実している。


24時間色々な商会も出入りしているので、生活をするには宮殿から外に出なくても事足りる。


ハーレムは得意分野によって生活空間が分けられ、それぞれに充分な広さの個室が与えられる。お互いに感性を高め合えるように談話室も備わっている。


宮殿内にいる従僕は、常に至る所で作業をしているが、ハーレムの女性に使いを頼まれたり、力仕事を頼んだり、様々な要望に対応している。


中には色恋の相手をする事もある。


自由恋愛を推奨する国なので、問題にはならないが、お互いが唯一と感じた場合のみ

ハーレムから出て夫婦となる事もある。


ハーレムを出る事が、若さ故の過ちだったと感じて出戻りを希望する場合は、専用の区間があり、若い娘達の教育係や、悩みの相談など、失敗したからこそ良きアドバイスが出来る頼もしい存在として重宝される。


そもそもハーレムの成り立ちは、3代前の王の時代に歴代屈指の美貌を持つたった1人の王子が産まれ、その王子が平民に恋をした事がきっかけだった。


王子は皆に反対され肩書きや貴族制度を心底邪魔に思った。


本来心優しく聡明な王子は誰からも求められた。自分の立場も理解していた。


「愛する人と結ばれたい」


でも自分を慕って支えてくれる者たちにも報いたい。王子としての責任もある。

たとえ王子に心から愛する人がいたとて、

皆王子に愛をささやき、思いを伝えてきた。愛されたいと望んだ。


王子は考えた。

皆が王子である自分を求めるのならと


望む者を全て妻にした。


自分1人だけ愛される事はないが皆一緒だ。

それでも良いなら妻にすると。


平民の女性は、王子が愛してくれるなら数多の1人で構わない。と言ってくれた。 


本当はたった1人を愛したかった。

求めたのは彼女だけだった


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