第2話

俺の名前は大輝

最近大学生になったばかりの18歳だ。

10年前、俺が8歳の時に

時間旅行が普通になった。

時間旅行自体は俺が生まれる前に

出来るようになったらしいけど。

それまであった噂は半分本当で半分嘘

といった具合になった。

だから施設から

時間旅行する人も増えた。

俺も将来のことが気になるから

未来に行きたい。

でも今は大学が楽しいし、

どうせ行くなら選ばれたい。

でもそれほど強い思いを

持っているわけではないから、

選ばれないんだろうなと

思いながら毎日過ごしていた。

あの日までは。



その日は突然やって来た。

いつものように、

財布を持って家の外に出たとき

突如声が聞こえてきた。

〖選ばれました。あなたは時間旅行を

今すぐできます。〗

そこまで強い思いを持っていないと

思っていたのに

選ばれたんだ。でもこれが

絶望の始まりだった。

「やった。どうせ時間旅行行くなら

選ばれたかったんだ。

今すぐ行くぞ。22年後に。」

何故22年後にしたかって?

だって30歳の自分より

40歳の自分の方が

想像つかないだろ?

だから22年後だ。

〖分かりました。

22年後ですね。

未来では気をつけてくださいね。

誰が自分に関係あるのか、

どの情報が自分に関係あるのか

分かりませんからね。

慎重にいかないと、

多くの寿命を払うことになりますよ。〗

そうなのか。それは大変だ。

でも、

「自分の将来を知りたいんだ。

何もわからないのは分かった。

だけど、

自分がどこに住んでるのかだけは

教えて欲しい。」

〖本来であれば、断るとこですが、

特別ですよ。仮にそれで

大変なことになっても

自己責任ですよ。

では、未来に。〗

そう言われたあと、

周りがぐわんぐわんと

揺れる感覚がした。

〖帰る時は帰りたいと

強く思ってくださいね。

そしたら元の時代に

帰れますよ。

この時代にある施設から

帰ることもできると思いますが。〗

当たり前だけど、

22年後の未来は

何もかもが違っていた。

俺の家だった場所はビルが建っていて、

街では車が空を飛んでいた。

ポッケに入っているスマホも

この時代でも使えなくはないと

思ったけど、

多分マップに教えてもらった地名

を入れてもヒットしないだろう。

どうやって場所を調べようか。

とりあえず色んな人に聞くしかない。 

でも慎重にいかないと、

大変なことになるからな。慎重に。

 

教えてもらった情報によると、

未来の俺が住んでる町は

ここから歩いていけて、

あまり大きくはないらしい。

町についたら散歩がてら

未来の俺の家を

探すことにするか。


町について20分ほど散歩していたら

ようやく俺の家らしい場所を

見つけた。この時代でもまだ、

家の前の表札はあるらしい。

おかげで家が分かった。

家に入ろうか迷っていると、

こちらに向かってくる誰かと

目が合った。

瞬間俺は理解した。

あの人が未来の俺だと。

未来の俺は俺を見るなり、

固まってその場に立ち尽くした。

そして近づいてきて、

こう言った。

「お前、過去の俺だよな。

過去から来たんだな。

俺はお前の想像通り

未来のお前だ。

悪いことは言わない

今すぐ元の時代に

帰るんだ。」

突然のことに理解が追い付かなかった。

「急になんてこと言うんだ。

あ、言うんですか。

せっかく会えたのに。

家族は?奥さんは?

子供は?

知りたいことがまだまだあるのに。」

帰れと言われた怒りで

初めの心掛けを

忘れてしまったんだ。俺は。

「それがダメだというんだ。

お前が過去の俺であることを

俺の家族が気づかないと

思うか?お前が過去の俺だと

家族にバレたら

お前は元の時代に帰ったとき、

多くの寿命を払わないと

いけなくなるんだ。

今俺はせっかく幸せなのに

お前は幸せをつかめるのに

その前にお前の寿命が尽きる

という事態になる可能性も

あるんだぞ。

今お前は未来の自分の家と

未来の自分の情報を知り、

未来の自分と会ってしまった。

未来は過去に行くより

多くの寿命を支払う必要があるんだ。

そこに家族に会うとか家族の情報を

得るとかしたら

若くして死ぬことになるぞ。

今帰ればこの未来は、

手に入れられるかもしれない。

だから今帰るんだ。

俺はお前のことを見ているぞ。

こっそり家族に会うとか

絶対にやめろ。

帰りたくないのであれば

観光してもいいが

慎重にいけ。

お前は未来の俺だと

俺を知る人間に

バレないようにな。

こっちの人に認識されなければ

お前いや、俺の寿命が減ることはない。」

「わかりましたよ。慎重にいきますよ。」

今思えばこの時素直に帰れば良かった。

でも熱くなった俺は意地でも

未来の家族に会おうと

考えてしまった。

(どうやって未来の家族に会おうか。

未来の俺にバレないように。)

当たり前だけど

"俺"が仕事行ってる間に

会いに行けば

バレないのでは?

でもその時に、

"俺"以外の家族が全員いる

という保証はない。

でも会いたいし、"俺"がムカつくし

それにかけてやる。

それまでどこか

この僅かなお金を使って

どこか泊まれるとこ探そう。



"俺"が家を出る時間を調べ、

泊まった先でその時を

待っていた。


その時が来た。

俺は"俺"の家へ

向かった。

万が一にでも

出くわすと大変だから

"俺"が確実に近くにいない

であろう時間まで待って。


家の前では"俺"の妻らしき人が

お花の世話をしていた。

目が合った。

「あ。あなたダメなんでしょ。

もう。お互いに認識しちゃったよ。

主人に怒られちゃう。

でも家に入りな。」

"俺"の妻に招かれて

俺は家の中に入った。

色々な話を聞いて

色々な話をした。

"俺"への怒りは

幸福感と達成感で消えていた。

"何か"忘れてるという気持ちを抱えながら


好奇心で、施設から帰ることにした。

家を出て施設へ向かおうと

歩いていたとき、

誰かとぶつかった

「イテッ。大丈夫か。」

子供だった。

向こうが驚いた顔をしていたため

気づいてしまった

(あの子、"俺"の子供だ。)


施設に着いてまた、驚いた。

"俺"は施設で働いていたんだ。

「仕事、お前にバレちまったか。

ようやく帰る気になったんだな。

俺の家族に会っただろ。

もうお前はあの幸せを

長く過ごせないぞ。

なんてことしてくれたんだ。

俺への怒りか?

家族と会えた幸福感か?

何で慎重にいかないといけないことを

忘れてしまったんだ。

やってしまったことは

取り消せない。

とにかく速く帰るんだ。

ほらこの機械に入って。」

そういうと、

"俺"は謎の機械の扉を開けた。

俺は扉の中に入りながら

後悔と絶望に襲われていた。

(何年寿命を払うことに

なるんだろう。

少なくとも家族と

何年かは過ごしたい

いや本当はもっと過ごせたのかも。

でも少ししか

同じ時間を

生きれない可能性が

高くなってしまった。

もっとあの人達と過ごす未来に

生きたかった。

あそこで調子のらなけけば。

そう後悔しながら

またぐわんぐわんとした

感覚を感じていた。

〖だから気をつけてと

言ったのに。

未来の家を知った

未来の自分に会った

未来の仕事を知った

未来の妻に会った

未来の息子に会った

合計で50年です

人生100年時代

寿命100年と 

仮定すると、

あなたはあと

32年しか生きれませんね。

だから未来は怖いのですよ。

もう直接会うことはないでしょう。

さようなら。〗

50年分の寿命それは

減っていることをすぐに

自覚するには充分すぎるほど

重かった。

俺の元の時代に帰って来た。

施設から出るなり、俺は

絶望と後悔にうちひしがれてた。

そんな俺を見て

一人の男の人が近づいてきた。

「君は未来から帰って来て

絶望してるんだね。

やっぱり時間旅行は

考えて動かないと。

僕は時間旅行が出来るようになって

すぐの頃選ばれて過去に母親に

会いに行ったんだ。

その経験が時間旅行の

より広い普及化につながったんだ。

時間旅行は過去にすがりすぎるのも

未来を気にしすぎるのも

良くないと教えてくれるんだ。

君は未来に行って何をしたんだ。」

「俺の将来を。

家族とか仕事とか。

そういうのを見に行ったんだ。

それよりもあなたの名前は。

いや、もしかして···」

「待って、そう。

時生。僕の名前は時生。

君は未来に行って知った情報で

知りたくなかったこと、

知って後悔したことは

あるか?」

「いや、ない。」

「じゃあいいじゃないか

少ないならその分

より強い気持ちで愛で

接するんだ。

足りない分を埋められるように。

僕はあと四十数年しか生きれない。

でも時間旅行が普及していくさまを

見ることが出来て満足している。

君も残りの寿命で出来る限りを

尽くすんだ。そうすれば

寿命足りないと思ってても

満足してあの世に行ける。」

そういった時生さんは

俺にとって輝いて見えた。

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