あざむき
五速 梁
第1話 あざむき①
おしえてパパ。「愛される」って、どういうこと?
「――もう、いつまでもアニメの玩具で遊んでないで、そろそろ中学の教科書を開かなきゃだめでしょ。ただでさえ他の子から遅れちゃってるのよ」
ママはたまに我慢の糸が切れて、わたしをどなりつける。いつもは「かわいそうな子」というあきらめと愛情が混じったためいきで許してくれるのに。
「まあ、成長には個人差があるんだ。親ぐらいは個性を認めてあげないと、この子は味方してくれる人がいない子になってしまうよ」
パパはそう言うと、わたしに向かって両手を差し伸べた。いつもの「お姫様抱っこ」だ。辛い時、ママに怒られた時にいつもわたしがおねだりするから、自然と口に出さなくても抱きあげてくれるようになったのだ。
パパは大きな会社をいくつも営んでいる頭のいいひとだ。わたしはパパの首に手を回し「大好き」と言って髭の残る頬に自分の頬を押しつける。
パパに抱きしめられると、いがらっぽい匂いと一緒に何とも切なくなるような不思議な匂いがした。その匂いを嗅ぐとわたしはおなかの下がきゅっとなるような気がするのだ。
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