短歌erに与ふる書
わきの 未知
まえがき(興味なければ無視して)
本作は、正岡子規『歌よみに与ふる書』の口語訳です。
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本作の目的は、子規が記した衝撃的な歌論の内容を、情熱的な筆致をそのままに、現代人に口語文でわかりやすく伝えることです。
私がZ世代の先頭の生まれであることを鑑み、主にZ世代以降の読者を意識して、子規のバイブスを意訳しました。
拙訳の新奇性は3点です。
第一に、敬語を全て削りました。
第二に、真意が悩ましい評論用語を、思い切って若者言葉に変えました。「趣味」「心」「拙し」→「エモみ」「バイブス」「カス」などです。
第三に、俳句・漢詩といった多様な文学による比喩表現も削除し、あたかも歌人そのものを批判する文章かのように再構成しました。心苦しく思い悩みましたが、香川景樹と大島蓼太を比較する文章などは、一般的な知識量では混乱を招くばかりではないかと考え、すっぱりと割愛しました。
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まず初めに、読者全員に対する警告です。
私は古文教師でも、正岡子規の研究者でもありません。国文学や歴史学の専門教育は一切受けておりません。短歌は学んだことがなく、俳句も数年やったきりです。
したがって、訳出は非常に不正確で、引用される歌の解釈、時代背景の説明も甘いかと思います。
また、作者の本来の文から意図的に単語を消すような不誠実は、本来ならばあってはならないとも考えています。
今や優れた文学作品には競って現代語訳がつき、明治前期の文学作品が取捨選択されつつある時代だと思います。子規の著作の訳本は、あまり見かけません。私は執筆背景も内容も知りませんでした。
子規は今や、取捨の捨に入る部類の文学者なのかもしれません。それを専門家でもない私が訳すというのは、筋違いの暴挙です。
しかし、それでも私は、この挑戦的な現代語訳に価値があると考えます。
我々Z世代の短歌教育といえば、百人一首をおざなりに教わるばかりです。短歌の懐古主義に穴を穿った子規たちの歌論は、ようよう忘れ去られつつあります。『歌よみに与ふる書』は、昭和生まれには読めましょうが、私たちにはほぼ古語に見えます。
ただ、私はこれを一読して、その内容は決して色褪せてはいないと感じました。
陳腐性の本質を穿つ洞察、主観・客観というメタ的視座の強調、音韻を自由に鑑賞する試み。短い原稿のうちに、基礎理論から作者独自の価値観までが凝縮された、とっつきやすい入門書と見なせるのではないでしょうか。
読者みなを納得させる内容ではないとしても、「短歌とはどうあるべきか」をきちんと考察した名文であり、その批判内容は現代詩歌を志す者に強い影響を与えうると、私は考えます。
平成生まれの私たちは、紀貫之の「人はいさ」を名歌として現代語訳させられます。正岡子規は名前だけ習います。
子規はもう少し、一般人に知られてもいいのではないでしょうか。
少なくとも私は昔から、「人はいさ」を名歌だとは感じていませんでした。「紀貫之は下手」と言い切った狂人がいたことを、高校時代に、誰かに教えてほしかったです。
誰も教えないならば、一般人からでも。そういう反骨精神をもって書きました。
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繰り返しになりますが、このようなアプローチがずさんな訳出を生むことは理解しています。
しかし、「あの正岡子規を面白く読めるって?」となれば、飛びついてくる若者は多いのではないか。そう期待するのです。
どうか、子規をエモいと感じたら、拡散してください。
ここから短歌に興味をもつ人もいるかもしれません。短歌erで目が覚める人も、自身の歌論に融和的に組み込む人もいるでしょう。使い方は人それぞれでしょうが、総じて短歌界の利益になればと願っています。
また、もし興味が湧いたらぜひ、より正しい現代語訳や、詳解を含む本を当たってください。
上河内岳夫さんという方が、note上で現代語訳を挙げられています。助詞助動詞の処理が丁寧な良訳です。
https://note.com/kamikochi_takeo/n/na83115e98af0
岩波文庫にもあります。こちらは訳はありませんが、時代背景についての詳細な解説と、子規が記したほかの歌論が収録されています。
ぜひ、下品で手荒な拙訳で立ち止まらず、現代にいたるまでの短歌に触れてみてほしいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
また、看過できない意味上の誤りがあれば、速やかに反映したく思いますので、ご連絡いただければ幸いです。
あまりに多く誤りがあれば、非公開にすることも覚悟しております。違和感のある箇所があれば、遠慮なくご指摘ください。
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正岡子規が好きです。
日本文学の巨人を讃え、かつその夭逝を悼み、拙訳を捧げます。
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