第5話
新たな怪物がいなくなりそれぞれに静寂が訪れていた。勝てるか分からない相手、自分の想像の範疇を遥かに超える相手に対して黙って早く嵐が過ぎるのを待つしかなかった。
「全員無事か?…作戦は失敗、報告に戻るぞ、」
天野と加藤が先に動き出し指示を出した。それのおかげで全員が動きだすことができた。帰宅途中の車両の中は、基地に戻るまで誰一人喋ることは無かった。
「新たな敵…しかも我々は神のゲームに付き合わされるということか?待ったく意味が分からんな、政治家どもに言っても鼻で笑われるな。今回は相手の目的と全員の無事を確認できただけで十分な収穫だろ。作戦は失敗だが良くやってくれた。」
天野と加藤が長官に報告をした。
「これから敵は頭を使って侵略してきます。敵がどう動くのかが分からない以上今まで通りの対応をせざる負えません。」
「都市への出現については、民間に被害が出る前に排除することが出来ていたがこれからはどうなることやら…。そちらの対策はこちらでやる。君たちは引き続き任務にあたってくれ。」
「「了解」」
天野と加藤は部屋を出てそれぞれの待機室に戻った。
「新たな敵、新たなテロリストか。いったいどれだけの悲劇が起きてしまうのか、想像するだけで嫌になるな。」
部屋に残った長官だけの声が響いていた。
新たな敵が現れてから数日、特に変化のない一日をそれぞれ休日として過ごしていた。
「お疲れ様です。天野さん」
「おう、青空か…どうかしたか。」
「あいつらの新しい情報はないんですか?」
「休日なのに待機室にいるのはそれが理由か。まだ新しい情報は入ってきていない。」
「だったら俺たちが調べれば良いのでは?なんで外されているんです」
新たな怪物の調査は作戦に参加していなかったβチームが行っていた。それが青空には理解できていなかった。やっと両親の仇を見つけたのにも関わらず何もさせてもらえないことがもどかしくじっとすることが出来なかった。
「落ち着け、あの作戦から両チームともに怪我人がでているんだ。今100%の力で動けるのはβだけなんだよ。全員が復活したらこちらにも仕事は回ってくる。」
天野が言っていることは青空に理解できているしかし、その負傷人が自分であることも理解しているが感情がそれについていかないのだ。青空はその言葉を聞き今は何もできないことを悟り部屋を出た。
「クソが…目の前に敵がいんのになー何もできないって結構きついな。」
青空は部屋を出た後街に繰り出し、目的もなくブラブラ歩いていた。街を歩いていると咲耶さんが目に入った。どうやら友達を遊んでいるみたいだ。彼女と青空は、救助した後お礼のために少し関わったぐらいだ。青空は彼女のことを綺麗な人で人の良さそうな人という認識だけにとどめていた。
「しっかり生活に戻れているようだな。それが偶然確認できただけでも今日はマシか。」
青空は気づかないうちに彼女の様子をボーっとしばらく見ていた。
「青空さん…?」
急に声を掛けられはビクッとして声のした方向に目を向けた。
「咲耶さん…どうも」
どうやら気づかないうちに近くに来ていたみたいだ。近くに来たことも気づかないほどにボーっとしてしまったらしい。
「咲耶、この方は?」
咲耶の友達が当然の反応を青空に向けた。
「んーこの間、出会って仲良くなったの」
「へぇー」
出会い方があれだったからか詳しいことは言えなかった。それは咲耶の友達も察したのか特に言及してこなかった。
「青空さんここでなにしていたんですか?」
「目的もなくただの散歩です。」
「何か考え事をしているみたいでしたけど。」
咲耶は青空をよく見ていたみたいだ。
「別に何もないですよ。咲耶さん、お友達が暇そうにしていますよ?」
「そうですか?分かりました。何かあったら連絡してくださいよ?今度は私が青空の力になりたいんですから。」
「ははっ、分かりましたよ。何かあったら甘えさせてもらいます。」
青空の言葉に満足したのか咲耶は友達を行ってしまった。
「相談ね…、いつかしますよ」
青空は怪物に家族を奪われてから誰かと関係を持つことにとても恐怖を感じていた。また失うかもしれないと考えるとどうしても歩み寄る一歩がでないのだ。咲耶に対しても救出した一人の女性という認識にとどめており、咲耶の歩み寄りに対しても一歩引いていたのだ。
家族が消えた
友も消えた
守る前に消えた
次が君じゃなければそれでいいのに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます