第4話 謎深き光浪志那と言う婆さん
そして……口約束ながらも、「当面は、貴方にお願いするわ」「君の仕事っぷりは何処か他とは違いカリスマ誠意を感じるので、毎週頼むことにした」とご近所のケイベン仕事が定着しているので、そこはこちらも外すことはできず。光浪の婆さんのような金持ちだろうが、一般的サラリー収入四人家族の斜向かいの家だろうが、むこうから話した未亡人のアパートの雑用的ことだろうが、優劣つけずに仕事を頂くことと決めていて、この日が来るまで平常個人営業でこなした俺だ。
光浪の婆さんの屋敷に、本日も、指定時間にあの洋館のリビングに十五時に到着するように……愛車の軽バンで、まずは格子門に突進するかのように公道T字路突き当りを法定規則は守って突っ込む……。
と、このナンバープレートなのか? 車種なのか? はたまた運転者の俺人証なのかは知る由もないが、格子門が勝手に開いて……通過するや否や……また閉じるのをルームミラーで流し目に黙認する。
手入れしたセコイアの木々に招かれるように来たこの屋敷敷地のP印の駐車場。軽バンを車庫入れバック一発で白線内に納める俺が、スマホできたことを知らせようと、懐から取り出し画面タッチする。表示時間は十四時五十六分だ。
「ああもしもし……歩里井屋ですが」と毎度スピーカー機能状態のスマホで電話する俺。
「はい。存じておりますよ。ここまでいらしてください」と光浪の婆さんの声に。
「ま、一応。他人の屋敷だ。敷地内にはともかく、屋敷内に入るには主の確認と許可を得てからじゃないと、俺は入らないんだ。婆さん」
「ほほぉ……案外律儀なんですね。若造は」
「ははっ」
ナガラスマホしている間に俺は玄関口まで来ていて、本日もガシャリと玄関ロック解除され、勝手に扉が開く。……電話を切ってスマホを懐にしまい……「お邪魔するぜ。婆さん」と一応、誰も他にいないと思われるエントランスへと入る俺。そういえば未だ知らぬ部屋と思われるリビング同様の扉があと二枚あり。向こうの上階連絡階段下が、Ⅼ字?
が、迷うことなくリビング扉へと足を進める……と、扉が勝手にカチャリとロック施錠して半開きに開いたので……「お邪魔するぜ」とリビングに堂々と入る俺。
と、案の定……上下ピンクベーススエット姿でロッキングチェアーに腰かけた光浪の婆さんが、テーブル奥に所定の位置で薄ら笑みを浮かべている。
「来ましたね。時間通りに」
「ああ、時間だけは、どうにもできないものだから。俺はこんなだが、守ることにしている。光浪の婆さんの場合は、時間ジャストがご希望だろうからな」
「ほおぉ……」
「銭や壊れた人間関係などの断捨離的事はどうにでもできるだろうが。時間だけは誰も戻すことはできない。かつての映画ではそれをやったヒーローもいたようだが、そんなことができる者は何処にも実在しない。この惑星の化学力でも遠き不可能な未だ夢事だ。例えば、異星人がこの惑星に潜んでいたとしても……タイムスリップして過去へと行けたとしても、時間を戻したことにはならない。いずれにしてもこの時点では、というより、どうあっても不可能極まりない技術力並びに至難の技だ」
「そうですね。私もそう思うわ。私のこの体も時期に失うことになるでしょうから。短時間なら生物を選ばなくとも良いのだけれど。生涯となると、乗移れる技を持つ異星人でも、DNA塩基が合致するベターハーフな知的生命体の生物でないとですよ。ふふっ」
「おお……婆さん自体がそうだと言っているようにも聞こえるが? 光浪の婆さんはそうなのか?」
「どうして? 私は只、一般論に基づいたことを言っただけですよ。ふふっ」
「が、言い方が、どこか、確信ついていたようにも取れたぜ、婆さん。ニタッ」
「だったらどうなの?」
「ま、どうってことないぜ」
「そうだと分かった瞬間に、遠ざかっていくでしょ。この惑星の人間は。とくにこの国では、やり玉や、誹謗中傷の的ですよね」
「ま、そんな特殊、珍しい奴がいたら、そうなるな。騒ぐだけ騒いで、ブームが去ったらどこ吹く風的にほおってかれて。誹謗中傷の的で苦しんだ当の本人を掬うことなくじまいで。そのままレッテル貼られて、社会的な体裁もそのまま落とされたままで……」
「そうね。なにか? 貴方とは気が合っているようですよ。ふふっ」
「ああ、なんか? 俺もだ」
薄ら笑顔で互いを見合う光浪の婆さんと、俺……。
「なかなか、どうしてですよ。若造」
「ううん? なんだ? で? 婆さん」
「ああそうですね。では、こちらへ……」と言った途端光浪の婆さんが座っているロッキングチェアーに、四つの車輪が出現し! 「ついてきてくださる?」と言った途端ロッキングチェアーが動き出す……それはまるでEV仕様の車いすの如しにだ。
「へえ」と些か驚くも俺はついていく……。この部屋をエントランスに出て。玄関とは逆方向奥の階段をも潜り抜けて、リビングに入る前の些かクエスチョンが、今、確信のⅬ字型のエントランスで、曲がった窓壁と内壁の廊下奥に、小ぶりの玄関パクリ扉がある。
ロッキングチェアーで移動する婆さんについてきた俺は、どうして動くのかを見て探ってもいた。コントロールユニットボックスもなく、手足で何かのレバーやボタン、ペダルも、所謂スイッチといった類のものは無い。瞳孔ランラン少年好奇心は未だ健在な俺だ。
扉前で振り向いてにやりとした光浪の婆さん……外に出て、向かった先は、先日俺も勝手に物色させてもらった例の小屋だ。
そういえば。各種扉も勝手にロック解除もだが開閉するし……コンピュータ仕掛け風にも微塵もない。今にして思えば不可思議極まりないことではあるが、それでも俺は、「この婆さんは信用できる」と踏んでいるので、こちらからの質問は野暮と言うことで訊かない。
野暮イコール……俺の中ではダサい! となる。野郎の俺はダサいことだけはしたくない。ダサいは一見して醜いやみっともない、へてして、無様も充分な理由が存在していれば、これに当てはまらない。
と! なんやかんやで、光浪の婆さんについてきた俺もが、例の小屋へと入っていた。
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