8章「その後のヴェルド領」
第52話「ガイル兄の恋」
#第52話「ガイル兄の恋」
王都から帰ってくる時にカレンさんも一緒にやってきた。
カレンさんは王国騎士団所属だけど、ここしばらくはうちの領で勉強することになっている。剣術大会でもガイル兄に勝利してベスト8の実力者なのでうちとしてもありがたい話。
そしてガイル兄とそのカレンさんは良い雰囲気だと思う。ずっと一緒に剣の練習をしているのだよね。
他の騎士団メンバーにカレンさんに興味がある人もいるみたいだけど、さすがにカレンさんは実力が高く、相手できるのがガイル兄しかいない。自然と2人になることが多い。
もしかしたら2人は恋愛に発展するかもねと……妹のエマとリナと話をしていた。私は男に興味はないが、やはり恋の話は大好物なんだよね。
どうなっていくのか2人の状況はチェックしていきたい。
ちなみに私と同様にガイル兄にも多数の縁談が来ているらしい。私は中身をみるまでもなく完全に断っているがガイル兄はまんざらでもないみたい。ルカが調子に乗っているかも?とか言っていた。まあ仕方ないんじゃない。ガイル兄の好きにすればいいとは思う。良い人がいたらそろそろ結婚すればいい。
ガイル兄は販促で使うようになってから知名度が高まり縁談の話も増えているようだよね。そのうちにもしかして見合いでもするのかな?
ただ気になることはある。その場合はカレンさんはどうするのだろう?私が見る限りお互いに意識しているような気もするんだよね。確信はないんだけど。
そう思ってルカに調査を依頼しようと思っていたら逆にルカから相談を受けた。どうやらガイル兄がカレンさんに避けられて落ち込んでいるらしい。
そこでルカに確認をした。
「ルカ、カレンさんがガイル兄に最近よそよそしいということで間違いないわね」
「うん、そうだよ。ガイル兄は最近、縁談が多いと喜んでいたのだけど急にシュンとなっちゃってさ。少しかわいそうなんだ」
エマとリナは「それは調査が必要ね」と言う。
それはそうだろう。カレンさんに何かあったのかもしれない。カレンさんに他に好きな人でもいるならば大変なことだ。ガイル兄には申し訳ないがそちらを優先するしかないだろう。ともかく重大事案だ。
「調査???なんだか大げさすぎない?」
それなのにルカはあまり深く考えていないようだ。これはいけない。
「何を言っているのルカ!これは我が家にとって重要な案件よ!ガイル兄とカレンさんに何かあったのかもしれない。至急、調査が必要よ!」
「とりあえずルカ……ガイル兄のところに行って探ってきなさい」
「何で俺が……」
ルカは断ろうとしていたがこんな重大事案に調査を入れないわけにはいかない。私達3人はルカに強く要請した。
そしてルカがガイル兄に確認することに、私達3人は近くで聞き耳を立てた。
「ガイル兄、どうしたの?少し前までは『春が来たかも!』と喜んでいたのに最近落ち込んでいるみたいだけど?」
私たちはルカとガイル兄の会話をこっそりと確認。
「ガイル兄、最近、元気ないけどどうしたのさ」とルカが問う。
するとガイル兄はしばらく考えながらルカに答えた。
「うん。ちょっとな。最近、縁談がたくさん来ただろう。だから俺は浮き浮きしてたんだ」
「そしてカレンさんから『何かあったのかい?』と聞かれたから、縁談がたくさん入って大変なんだよと答えたんだ。そしたら急に機嫌が悪くなってな。最近ではかなりよそよそしいんだ。それがちょっと落ち込んでたんだよ」
ああ、どう表現していいのだろう。ガイル兄はここまで馬鹿だったのか?好きでいてくれるかもしれない女性にモテ自慢するとか馬鹿としか言えない。
「「「ギルティ―!(有罪!)」」」
私達3人の意見が重なった。これはどう考えても駄目だ。
「これは……完全に有罪ね。」
「ええ、確定だわ。脳筋とは思っていたけど、ここまで馬鹿とか思わなかった」
「ガイル兄は女心を分かってないわね。鈍感すぎね。もう死ぬしかないわ」
どうしたらガイル兄にこの問題を教えようかと思っていたら……やはりルカは頭がいい。ちゃんと私達の代わりに伝えてくれた。
「うーん。それはちょっと……まずいんじゃないかな?」
「何でだ?正直に現状を話しただけなんだが。嘘をつく方がまずいだろう」とガイル兄は全く分かっていない様子。
「うーん……例えばなんだけどさ、ガイル兄……今、身近で好きな人はいる?」
「ん?そうだな……カレンさんみたいな人が理想だな。綺麗だし強いし、俺の理想にぴったりだ」
「……だったら、縁談がたくさん来てるってカレンさんに言ったの、かなりの悪手じゃない?」
「なんで?良いことじゃないのか?聞かれたことには正直に答えるのは当然だろ」
うーん。こりゃ駄目だ。ガイル兄はかなり重症。脳筋すぎる。本当に何もわかって無さそうだ。
「じゃあさ、カレンさんに縁談が山ほど来てるって聞かされたら、ガイル兄どう思う?」
「えっ?そ、それはかなり嫌だな。なんでそんな話を俺にするんだって怒りそうだな……うん???」
ここまで説明されてようやくガイル兄は自分の失態に気づいたようだ。オロオロしている。ほんと鈍すぎる。
「でしょ、これはかなりまずいよ。ガイル兄」
「しまった。俺は大変なことをした。ルカ、俺はどうしたらいいのだろう」
六歳児のルカに恋愛のアドバイスを求めるガイル兄。何ともおかしな光景だがここはルカに任せるしかないか。さすがに聞き耳を立てている私たちが乗り出すわけにもいかない。
本当にガイル兄には困ったものだ。
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