第49話「ありがとう、生まれてきてくれて」
#第49話「ありがとう、生まれてきてくれて」
涙が止まらなかった。
どうしてこんなにも涙があふれてくるのだろう。嬉しいはずなのに、胸の奥がぎゅっと締め付けられるようで、言葉にならなかった。
そんな私に、ルカがそっと声をかけてくれた。
「ごめん、リリア姉、俺が何か悪いこと言った?大丈夫?どこか痛いの?」
ルカは心配そうな顔で、優しく、まっすぐに私を見てくれた。ほんとルカはいつもやさしい。でも私は首を振って、何とか笑顔を作った。
「ごめんね、ルカ。大丈夫……これはね、嬉しくて泣いてるの。止まらないだけ」
「これまで領に何も貢献できなかったから……ガイル兄は騎士団で、マルク兄は農産物で、テオとエマは酪農で、カイは物作りで……私だけ何もできない、領に貢献できてないと思っていたの……私は魔法が使えるだけ」
「それは違う!」
「そうだよね。やっぱり、私のしたことなんて……たいしたことないよね。領に貢献したとか勘違いだよね」
「違う!そうじゃない。逆だよ」
と再びルカは力強く私の言葉を遮った。ルカにしては珍しい、私に対してこんなに強く反論することはない。
そしてルカが大泣きしながら続けた。
「なんでそんなことを言うの?今回もリリア姉は凄い領に凄い貢献したけど……リリア姉はずっと前から領に貢献しているよ」
「俺、父さんと母さんに聞いたよ。リリア姉がずっと頑張ってきたからヴェルド領は何とかやってこれたって。リリア姉はわずか5歳の頃から魔法の特訓して、8歳で初討伐して、しかも10歳から他領にも出て……小さな頃から懸命に努力してずっとヴェルド領を支えて守ってきてくれたのはリリア姉だよね」
「もしリリア姉が頑張ってくれなかったら……ヴェルド領は更に厳しくなって俺は生まれてくることさえもできなかったかもしれない。リリア姉はずっとヴェルド領を支えてきたし……そして何よりもきっと俺の命の恩人だよ」
ルカはいい子だ。いつも私を過大に評価してくれる。でもそれは違うよね。
「私がヴェルド領を支えてきた?それは違うよ、ルカ。私は懸命に頑張ってきたけど、たいして何も貢献できなかったよ。ヴェルド領はずっと苦しい状況だったのよ」
でも、今度は父さんと母さんが私の言葉を遮った。
「何を言っているんだ。リリア。お前がずっと頑張ってきたからこそヴェルド領は何とかやってこれたんだぞ」
「そうよ。父さんの言う通り。あなたがヴェルド領を支えてきたのよ。あなたがいなかったらヴェルド領が今もあったかどうかわからない。そしてルカが言う通りよ。あなたが頑張ってくれたからこそ私はルカを生むことができたのよ」
次にガイル兄も語り始めた。
「そうだよな。以前の騎士団は領の魔物討伐で手一杯だったから他領に行く余裕うなんてなかった。リリアだけが唯一、他の領でお金を稼いでくれたんだよな。ありがとうリリア」
その次にマルク兄とテオも語り始めた。
「俺とテオはグレイン領に行っていた。最初は残っているガイル兄やリリアが羨ましいと思うこともあったけど、当時はグレイン領の方が豊かだったからな。逆に領に何もできずに申し訳なかったよ。リリア、領を守ってくれてありがとう」
「そうだよ。俺たちが行ったグレイン領は農産物が豊かだったから困ることはなかったよ。リリア姉が領の苦しい時期を守ってくれたおかげで俺たちは戻ってこれたんだ。ありがとう」
エマも涙ぐみながら語り始めた。
「リリア姉はルカに似て自己評価低すぎるよ。みんなリリア姉が懸命に努力して領を守ってきたことを知っているし感謝している。もっと誇ってよ。本当にありがとう」
そしてカイも
「うん。俺が戻ってこれたのもリリア姉が苦しい時のヴェルド領をずっと守ってくれていたおかげだよな。感謝の言葉を伝えてなくてごめん、リリア姉」
更にリナも
「ありがとう。リリア姉。ヴェルド領を守ってくれて。そしてルカを守ってくれて」
そうしてガイル兄もマルク兄も、テオもエマもカイもリナも、みんなが私に感謝を伝えてきた。
そして最後にルカが……涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら言った。
「俺、ほんと馬鹿でごめん、リリア姉にもっとちゃんと感謝を伝えれば良かった」
「きっと俺が生まれてこれたのもリリア姉のおかげだし……それに魔法で行き詰っている時もリリア姉は助けてくれた。楽しい時も悲しい時も辛い時もリリア姉が助けてくれたのに……俺はリリア姉が苦しんでいることを何も知らずに……本当に俺は馬鹿だ。ごめん、リリア姉」
「だから……もう自分が何もしてないなんて言わないで……リリア姉」
「そんなことないよ。ルカ、私の方こそ……分かってなくてごめん。そしてみんなありがとう」
「ルカ、ほんと生まれてきてくれてありがとう。ルカがいてくれて本当に良かった」
「そして父さん、母さん、私は2人の娘で良かった。みんなも。私はみんなの家族で良かった。本当にありがとう」
ああ、私は馬鹿だ。みんな私のことを認めてくれていたのに全く気が付いていなかった。
私が自分なり頑張って……領のためにと思って魔法使いとして生きてきたことは間違いではなかった。本当にこれで、これまで通りで本当に良かったんだ。
そして急にあの頃の私を褒めてあげたい気分になった。
10歳の時に魔法使いとしてギリギリと言われても諦めずに食らい付いて懸命に努力を続けた私…その後も努力はなかなか身にならず魔法使いの底辺だと思いながらなんとかしようと先輩たちに教えを乞うて試行錯誤した私…ルカという大きな才能に圧倒されながらも負けずに頑張った私…
過去の私の1つでも欠けていたら今のこの時間は無かったかもしれない。その時の私、本当によく頑張った、偉いよ。誇っていいよ。
ああ涙が止まらない……、
本当に…しんどかったけど懸命に頑張ってきて良かった。
父さん、母さん、兄妹たち、ありがとう。私は――この家に生まれてきて、本当に良かった。
ルカを始めとして…仲が良くやさしい兄弟姉妹に囲まれて本当に幸せだ。
大変だったことも、辛かったこともあった。けれど、それ以上に温かくて、幸せで。
私は――本当に幸せ者だ。
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