第38話「子爵叙任と再会の妹」
#第38話「子爵叙任と再会の妹」
「皆、少し集まってくれ」
父さんは昨日、貴族評議会に出席していた。
どうやら今からその会議の内容についての説明をするらしい。父さんの呼びかけで私たちは宿屋の広間に集まった。でも、父さんは少し顔が強張っているように見える。何か大きな問題でもあったのだろうか。ちょっと不安だ。
「昨日、王都での貴族評議会があった。そこで、皆に正式に伝えなければならないことがある」
そう切り出した父さんは、ゆっくりと息を吸い込み、はっきりと口にした。
「我がヴェルド家は、正式に子爵に叙されることになった」
――えっ?
一瞬、時間が止まったようだった。
「ええええっ!? 子爵って、あの子爵?」
「すごいじゃないか、父さん!でもそんなことあり得るのか?」
私はあまりにもびっくりして「あの子爵?」と叫んでしまったけど、ガイル兄もっびっくりしたようでそんなことがあり得るのかと不思議そうにしている。
だっておかしい。それってつまり、我が家の爵位が二段階も一気に上がるということでは?
でも、その一方でとぼけた声が聞こえてきた。
「ししゃくって、なに?」
ぽかんとした顔で問いかけるルカ。……もう、本当にもう! いつもは賢いくせに、こういうところだけ変に抜けてるんだから。
でも、その一言で広間の空気が一気に和らいだ。肩の力が抜けたように、家族の間に笑いが広がる。
「ルカ坊は天才なのに変なところで抜けているな。子爵というのは、貴族の中でも上位の位だ。今までヴェルドは準男爵という、言っちゃ悪いが貴族としては最下位だった。子爵はそれより二段階も上だ。それにしてもおかしい、二段階上がるとか聞いたことがない」
バルド団長がすぐに補足してくれた。子爵という爵位の位置や、今回の異例な昇進ぶり――準男爵から男爵、そして子爵へと一気に上り詰めるのは、まさに前代未聞とのことだろう、私も聞いたことがない。
私はその説明を聞きながら、思わず目頭が熱くなった。
苦しかった時期を思い出す。
何もなかったこの領でみんなで必死に努力してきた。きついのを我慢して魔物討伐に奔走した。そうやってなんとか土地を守った……。
でもルカが生まれ領の魔物討伐を改善し、更には一人一人が農産物の育成、酪農などそれぞれの役割を全うしてきた。それが国に認められたのだろう。
私たちの努力が、こうして形になったんだ――そう思うと、本当に誇らしかった。
そんな中、勢いよく扉が開いた。
「ただいまー!でいいのかな?」
懐かしい声が響く。私の7つ下の妹、三女のリナだ。王都で商業の勉強をしていた彼女が、久しぶりに戻ってきた。以前より洗練された雰囲気になっている気がする。
久し振りに会えて本当に嬉しい。ルナは元気そうだ。商業地区で勉強していたことを楽しそうに話している。愚痴もあるようだけどね。
子爵就任とルカの帰還と今日はいいことばかりだ。
でも……
――ルカが、もうリナと仲良く話してる!?
リナの専門の商業の話をあれこれしている。私には分からないような難しい話で割り込むこともできそうにない…。
だ、駄目だ。それは駄目! いくら妹でもルカを独占するのは許されない!
「そうだ、ルカ。ちょうどいいわ。そろそろ訓練の時間よ。私はもうすぐ魔術大会があるから、模擬戦に付き合ってよね!」
「えぇっ!? 今から!?」
もちろんよ。大事な訓練なんだから。
……私はごまかすようにそう言ったけれど、本当はルカと一緒の時間を過ごしたかっただけなのかも。
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