Episode.6...Nowhere.

 何もしない日々が続く。トランプで言えば、ジョーカーみたいに仲間外れでいて、それでも強力な場の強さが僕は潤沢な静けさを纏い、そこに眠っていた。

 永遠なる眠り。

 空虚に満たされた時間は、ただ長く、重い。明道を探す思考。思考。詩作。

 けれど、その中に詰まっているのは、迷いと戸惑いに似た感情だった。

 コルク瓶に軽く詰め込んでいよう。僕まで、落ちこぼれないように。

 ポケットに紐を入れて持ち歩いたことがあるだろうか。

 絡まった紐束のように、僕の心はビリヤードのキューのように押しつぶされていく。

 鈍く光る心。石ころみたいだ、ちょうど浜辺においてある石ころは誰のものか競争するみたいに取り合って結局は流され海の淵へと消えていく。

 鈍く磨かれる前の原石は、丁度僕の心に似ていて、亜紀が布のようにゆっくりと優しく汚れを落としていくれないと、僕は僕らしくいられないのだった。

「何でもない自分」が、何であれば良いのか分からない。

 そんな自分が嫌になったら、まずどこかに留めておこう。離れないように、逃げていかないように。思考は現在のままで留めておく。

 何に生きればいいのかも分からず、堂々巡りの思考は、和独楽のように回り続ける。

 それで良かった。現在位置を知ったから。

 亜紀の存在が僕を救った。位置を確かめ合うためだけにいた女性の存在。僕の頭脳を整理するには十分すぎるほどの時間をくれた存在。

 絵美理もそうだった。

 女の子といると静かになる。

 でも、それだけでいいのか?

 僕のやりたいことは何だろう。

 友達はなぜいないのか。

 増やすべきか、減らすべきか。

 疎遠の方が気楽だと、自嘲する自分もいる。

 彼女は今、何を始めているだろう。

 想いは数えきれないほど湧いてくる。

 亜紀でも絵美理でも、どちらでも良かったのかもしれない。

 ただ、誰かと体験を共有したかっただけなのかもしれない。

 共有するのは何だろうか?愛それとも、会話に還元されるだけの発散?

 僕とは何だったのか。

 有限な時間に甘えている自分が、憎らしいとは思わない。

 ただ、満たされない想いが、彼女を見ると沸々と湧いてくる。

 何が正しくて、何が間違っているのか分からない。

 泡のように湧いてくる感情が、僕を束縛する。

 間違っている根拠はない。

 それでも、彼女に救いを求めてしまう。

 社会は「何者かになる」ことを求めているわけではない。

 でも、学生の身分で何かを始めるには、限界がある。

 趣味は山ほどあるはずなのに。

「どうしてそういう発想に行きついたの?」

 心の向こう側の僕が問いかける。

 向かうべき場所とは、自分らしくあること。

 それだけが、僕の防衛本能だった。

 でも、僕は脆い。

 炭のように剥がれ落ちる存在だ。

 この世界は綺麗であってほしい。

 それを願うだけの傍観者でしかない。

 生きるのは辛い。

 青春よりも、ずっと青春だ。

 リア充なんて、どうでもいい。

 悔いの残らない先に辿り着けるなら、それでいい。

 でも、想いはループする。

 機械仕掛けの独楽のように、止まらない。

 音楽も映画も、心を満たしてはくれない。

 彼女でも、お金でも、足りない。

 それでも、誰かに言われたい。

「困らないでよ、あたしがいるから―――」

 そんな言葉を聞いたら、僕はきっと彼女を見捨ててしまう。

 それでも、彼女と一緒にいる日々は、泡のような悩みを救い上げてくれる。

 心の階層で言えば、上へ向かう方向に。

 下にはもう行った。

 だから、僕は考え続ける。

 どうすれば良かったのか、と。

 小学生の頃は、何も考えずにいられなかった。

 中学生になると、社会のレールが現れた。

 高校生になっても、心の向こう側の僕は語りかけてくる。

 絶望の淵へ誘うように。

 でも、僕は叫ぶ。

「この世界は最高だった。間違いなんてどこにもない。悩みは砂漠のように不毛で、もう消えた。―――日はまた昇る」

 彼女も同じように泥んでいた。

 でも、その関係はもう終わらせたい。

 瞳が開かれた瞬間、景色は広がった。

 それが、僕の知的好奇心の理由だった。

 戯言かもしれないけど、僕は笑った。

 亜紀は笑わなかった。

 真剣に聞いてくれていた。

 彼女の微笑みは、月の光のように美しく、僕を照らしてくれた。

 それだけで、僕は僕でいられる。

 罪なんて、戯言だ。

 孤独を選ぶ防衛本能が、新たに生まれた。

 彼女には話していない。

 困らせたくなかったから。

 でも、僕は僕だった。

 見失っていた自分を、取り戻した。

 彼女は、僕の味方だった。

 それだけで、十分だった。

 また、ピアノでも始めようか。

 ギターショップに足を運ぶような生活も悪くない。

 ツンデレのヒロインのように、最後は彼女もヒーローになるのだろう。

 彼女の笑顔は、道端の花のように、オンリーワンだった。

 だから、僕は選んだ。

 間違わないと、信じている。

 僕は大きくなった。

 何かを捨ててでも、心の器は広がっていく。

 彼女の存在は、半永久的だった。

 それが、僕の救いだった。

 絵美理でも良かったかもしれない。

 でも、道は誰にでも開かれているわけではない。

「運命の人って、信じられるかい?」

 多分、いない。

 でも、バディのような存在は、自分で見つけるしかない。

 だから、今の僕がある。

 心の向こう側の僕に、問いかける。

 悩みの種は、もう消えた。

 僕は、僕だった。

 彼女は、僕のパートナーだった。

 それだけで、十分だった。

 満たされていったのは何?会話、ストレスの解消?精神の安定?それは全部知らぬ間にファイルへ蓄積されていくダストボックスみたいに。

 全てがエラーだった。

 僕と亜紀。

 聖者と邪魅。

 他人に妖しく見せることのどこに境界線があるだろう?

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