幸せは君の形をしている
ものくろぱんだ
プロローグ ある少女の話
姉が、嫌いだ。
短いスカートが似合う愛らしい姿かたちも、双子の癖に年長者ぶるところも、全然真面目じゃないのに両親に可愛がられているところも、クラスで一番目立つグループに入ってるところも、リップも塗らないのにぷるぷるの唇が、ほんのりピンクがかってるところも、私が好きだった先輩に告白されるところも、それを断って私に構いに来るところも、ホワイトデーには姉宛てのチョコが長蛇の列になるところも、可愛子ぶってハーフツインなんてしているところも、そばかすひとつない、いっそ浮くような白い肌も、校則違反の着こなしを平気でするところも、ろくに本も読めないくせに料理ばっかり上手いところも、一回り大きいジャージを着ているところも、私なんかの姉であることさえ。ぜんぶ、全部。
その真っ直ぐな髪が羨ましくて。そのくせ生まれつきの黒色を、灰色なんかに染めるから。
その甘く色付く頬が羨ましくて。そばかすのひとつもない、人形みたいに綺麗な顔で。
だって、華奢な体躯すら嫉妬するほど羨ましい。妬ましくて、どうしようもない。
双子だと言うのにどこまでも正反対で似ていない。友達が少ない上に浅い付き合いしかできない私と違って、姉は友人たちに囲まれて常にきらきらと輝いている。家でも姉から逃げるように部屋にこもって、リビングで両親と姉が談笑しているのを遠くで聞きながらゲームを進める。これから先もきっとそう、このまま、酷く焦げ付くような劣等感を抱えて、私は生きてゆく。
────────そのはずだった。
「お待ちしておりました、救世主殿」
目の前には、飽きるほどに目にしてきたゲームの中の登場人物。周りはいっそ神聖な空気すらも感じさせるような豪奢な細工の施された壁。一番奥、一際高く目立つ場所で、無垢なまでの笑みを浮かべているのは、確かにあのゲームの顔とも言える存在、メインキャラの一人である、ガルシウス。
間違いなかった、私は確かに、ずっと夢見ていた世界にやってきたのだ。
ならば、ならば。
この世界には間違いなく、あの人がいるはずだった。
ずっとずっと好きだった。部屋の中は彼のグッズやポスターで溢れかえり、イベントに登場すれば必ず手に入れて、誰よりも大切に育成して、彼に関するストーリーは全て読み込んだ。この世で一番大好きな、私の最推し。
「待っててね、リュディカ様─────!!!」
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