深夜アニメの闇の魔法少女にTS転生 〜お気に入りのキャラに転生したので意味深キャラとして魔法少女達を曇らせます〜
肇真 りか
第一話 闇に堕ちた星
目を開けると、世界は紫だった。
濃密な霧のような闇が空間を漂い、どこか甘い匂いが鼻腔をくすぐる。天井は見えず、足元に広がるのはまるで鏡のような黒い床。感覚はやけに鮮明で、夢にしては妙に現実的だった。
「……ここは……」
目を落とすと、自分の姿が映っていた。
漆黒のフリルドレス。腰まで届く銀髪。赤紫にきらめく瞳。白く整った肌。そして何より、この狂気じみた美貌。
――ステラだ。
『魔法少女✡リトルスターズ』の中で、狂信的なまでに推していたあのキャラ。敵組織レザスターの幹部にして、魔法少女たちの前に立ちはだかる闇の魔法少女。
TS転生したらしい。しかもステラに。
「……ははっ、マジかよ」
ステラは、原作では主人公たちの強敵として立ちはだかりながら、その真意は終盤まで明かされなかった謎多き存在。終盤、明かされたのは――
(『お前たちの希望は、誰かの絶望の上に築かれているんですよ?』)
彼女のこの台詞に震えた。理不尽なまでの強さと、何かを知っている者の“哀しげな微笑み”。推しが、ただの敵じゃなかったと分かったときの、あの高揚感――忘れるわけがない。
だが今、自分はそのステラになった。敵サイドのキャラ、しかも終盤で真相が明かされる意味深ポジション。
「よし。やるか」
とことん“意味深”を貫き通そう。原作では断片的にしか描かれなかった“ステラの視点”を、この転生世界で補完してやる。魔法少女たちを曇らせ、揺さぶり、物語を彩るダークヒロインとして――。
彼女たちはまだ知らない。自分たちが“希望”である限り、その裏に誰かが“絶望”しているという事実を。
ステラはレザスターの本拠地、
そこは現実と異界の狭間に存在する次元。瘴気の流れる空間の奥、巨大な黒水晶の玉座に腰掛けながら、ステラは淡い光の魔石を指先で転がしていた。
「ゼータ、イプシロン、カペラ、メイサ……さて、誰から曇らせようかしら」
記憶は完全だ。原作のストーリーも、各キャラのバックボーンもすべて把握している。むしろファンだったからこそ、彼女たちの“心の隙”を誰よりも知っている。
まずはゼータ。春波十香。優雅で品行方正な完璧少女だが、その優雅さは“努力”で作り上げられたもの。自分の感情すら律しようとする、その姿勢の裏にあるのは、自己犠牲の精神と――孤独。
「綺麗ね、十香さん。けれど、綺麗なものほど、壊れるときは儚いのよ」
翌日。
ステラは“偶然”を装ってゼータに接触した。
舞台は学園。原作でも彼女たちは表向きは一般の女子学生として暮らしていた。敵幹部であるステラが人間界に現れるだけで、魔法少女たちは警戒する。だがステラは、正体を隠し、ひとりの転入生として現れた。
名は、星野ステラ。
「初めまして、星野ステラです。よろしくお願いします」
微笑を浮かべる。完璧な礼儀作法。物腰は柔らかく、それでいてどこかミステリアス。完璧な“意味深キャラ”の完成だ。
「……星野さん、はじめまして。春波十香です。よろしくお願いしますね」
ゼータ――春波十香は一瞬、何かを感じたようにステラを見た。だが、すぐに完璧な笑顔を返す。
「ふふ、なんだか似てるかもね、あなたと私」
「光が強すぎると、影が生まれるもの。あなたを見てると……なんだか懐かしい気持ちになるわ」
意味深な言葉を残し、その場を去る。背後でゼータが何か言おうとする気配を感じながら、ステラは“曇り”の種を確かに蒔いた。
放課後。
レザスターの拠点に戻ったステラは、次の標的を思案していた。
「イプシロン、並木修。彼も……狙い目ね」
原作では、冷静で理論派。だが実は過去に感情的な爆発を起こしたことがあり、それを恥じて常にクールを演じている。完璧に見える彼にも、心の奥に触れてはいけない“感情”がある。
そこを突く。
数日後。戦闘が始まった。
ステラはレザスターとして、魔法少女たちの前に立つ。
紫の闇を纏い、宙に浮かぶ姿は圧巻だ。魔力の波動が空間を歪め、周囲の木々が枯れ落ちる。
「あなたたちは何も知らない。誰かを救うというのは、誰かを見捨てることでもあるのに」
「ステラ……!」
ゼータが剣を構える。イプシロンは静かに構え、戦況を分析している。
「教えてあげましょうか。あなたたちの“希望”が生まれたその裏に、どれだけの“闇”があったのか」
詠唱が走る。闇の花が咲き乱れ、紫黒の光が魔法少女たちを包む。
ステラは、勝つつもりなどなかった。勝利ではなく、“揺らし”が目的だ。力の差を見せつけ、意識に楔を打ち込む。
「イプシロン。あなた、本当にそれでいいの? その冷たい表情の裏に、泣いてる子供がいるんじゃない?」
その一言で、イプシロンの表情が一瞬だけ揺らぐ。
「黙れ……」
「私はあなたたちの敵。でも、敵というのは、ただ排除するための存在じゃない。“知る”ための存在でもあるのよ?」
戦いの後、ステラは一人、夜の屋上に佇んでいた。
闇に染まる空の下、都市の光がぼんやりと瞬く。
「さあ、曇ってもらおうか、私の大好きなヒロインたち……」
月を見上げ、ステラは小さく笑った。その笑みには、哀しみと期待、そして――どこか愛しさが混じっていた。
次はカペラだ。孤高の覚悟を抱いた少女。
“誰にも頼らず、ひとりで戦う”という強さは、裏を返せば“誰にも頼れなかった”弱さ。そこに、ステラは優しく手を差し伸べるのだ。
敵であるはずの存在からの、救いのような言葉で。
そしてメイサ――。すべてを見抜く眼を持つ彼女にこそ、あえて“真実に似た嘘”を投げかけよう。疑念と不安という名の種をまき、彼女の理性すら揺さぶっていく。
「これは、ただのゲームじゃない。彼女たちを“本当に”曇らせてこそ、私は――“ステラ”になれる」
そう、これは愛の裏返し。
この物語は、魔法少女を惑わし、曇らせ、そして――救う物語。
意味深キャラとして、全力で推しの物語に“介入”する。彼女たちの未来は、原作通りにはいかせない。
だって、この世界では――
「私はもう、“観客”じゃないから」
闇の星、ステラ。その瞳が、再び赤く輝いた。
✣✣✣✣✣✣✣✣
お読み下さりありがとございます!
楽しんでもらえたならいいね👍とこの作品オススメできると思ったら✨✨✨の程よろしくお願いしますm(_ _)m
重要人物等は物語の詳細に一部載っておりますので宜しければ宜しくお願いします。
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