眠る前に
茶村 鈴香
眠る前に
むかし むかし
小さい従姉妹と
もっと小さい従姉妹と
一人だけ男の子の弟の為に
寝る前に本を読む係だった
きれいな装丁の
知らないお話たち
ロバの皮を着たお姫様の話
太陽の東と月の西の話
絵本は分厚くて重かったけど
挿絵にうっとりしながら
声色を演じ分けて
お話を読み続けた
一番先に弟が眠り
小さい従姉妹が眠り
もっと小さい従姉妹は
私のお腹を触りながら眠った
私はひとりで
次のお話を読む
声に出さないで
小さい従姉妹の掌を感じて
明日の夜はこれにしよう
そう決めても眠くならない
腕が耐えられなくなって
絵本を枕元におろす
お話はぐるぐる混ざって
でもまだ眠れなくて
電気を消して月あかり
誰か私に読んでくれないかな
全然知らないお話を
お姫様でも王子様でもなくて
何だか知らないお話を
ゆっくり読んでくれないかな
月あかりがまぶしい
月の裏側から
兎かかぐや姫が
寝物語をしに来てくれないかな
いつのまにか眠ってた私が
次の朝も一番の朝寝坊
むかし むかしのお話だけど
今でも寝つきは悪いみたい
明日もきっと 朝寝坊
眠る前に 茶村 鈴香 @perumi
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