第4話 「混血」の少女

変化は唐突に起こった。淡い金色の髪をした少女が突然「竜の都」に入ってきたのだ。そして少女は言った。

少女「竜の王様!私をどうか人間にしてください!」

竜の王は困惑した。アーリオの知り合いかと思ったが、彼も知らないと答えた。迷い人、にしては目的があり、『試練』に挑みに来たにしては貧弱な見た目だった。だが、竜の王は少女に言わねばならぬことがあった。それは、「『試練』はすでに攻略されている。「神」の言が真実であれば、役目を終えた私が再び君に『試練』を受けさせることはできない。」と。それを聞いた少女は、絶望に打ちひしがれ、

少女「そんな、、では、私はどうすればよいのですか!?」

といった直後、はっとしたような顔で

少女「申し訳ありません。取り乱しました。」

と、非礼を謝罪した。そんな少女にアーリオは尋ねた。

アーリオ「お前さん、何しに来たんだ?『試練』を受けに来たッつー事はなんか欲しいものでもあんのか?」

その質問を受けて、いや、質問をした「人間」を見て、少女は顔を恐怖と悲嘆に染めながら答えた。

少女「私は、人間になりに来たのです。だって、私がハーフエルフだからって、母様と父様が、汚れた者どもだって、うぁぁ、、」

歯の根が合わない様子で、動悸と過呼吸に侵されながらその少女は話した。

アーリオ「要するに、お前さんはハーフエルフで、それが理由で人間から差別されてた。だからお前さんは人間になって差別されるいわれをなくしたい。そういうことか?」

ひどく冷静な、だが怒りのこもった声でアーリオは言った。竜の王も同意見だった。やはり皆が友のような善人ではないのだと理解されられた。少女は答えた。

少女「そうです。私はどうせなら人間として生まれたかった。でもそれは叶わぬ願いで、この先どうすればいいのでしょうね。」

アーリオ「お前さんのその先は知らん。けどまァとりあえずその馬鹿どもの居場所を教えろ。報いを受けさせてやる。」

しかし、アーリオに応える少女の言葉に、より竜の王たちは絶句する事となった。

少女「いえ、私のために怒っていただかなくとも。魔族は蔑まれ、疎まれ、奪われて当然で、今更気にするほどの事でもないですよ。」

と、少女は笑顔とも泣き顔ともとれぬ顔で言った。竜の王達は何も言えなかった。少女はきっと生まれてから差別が当たり前の環境でしか生きられなかったのだろう。竜の王が何か慰めの言葉をかけようとする前に、

アーリオ「はァ?情けねェ事言ってんじゃねェよ。魔族だからって差別されて良い理由にはならねェし、まず自分に降りかかる不幸に抗わねェのはおかしいだろ。1人でできねェッてんなら俺とかこいつとかが手伝ってやる。だからよォ、諦めた面ァしてんじゃねェよ!」

突然、アーリオが叫んだ。驚愕する2人を前にアーリオはなおも続けた。

アーリオ「それとも、お前さんはその人間共に感謝でもしてんのか?復讐する理由がねェなら俺がただ出過ぎたこと言っただけだ。忘れてくれ。で、どうなんだ?」

少女は少しの逡巡のあと、

少女「そりゃ、私だって言われの無い差別なんて真っ平ごめんですよ!痛いのも!苦しいのも!なんで私なんだっていつも思ってますよ!そうじゃなかったらこんなとこまで来ないでしょう!でも、私には抗い方が分からないんです。だからこうなったんです。」

目尻に涙を浮かべながら、少女は叫んだ。それがひどい苦痛に耐えてきた少女の心の叫びだと思った竜の王は、アーリオに語りかけた。「もし、目の前の少女が復讐を望んだら、私は力を貸そう。君はどうする?」

アーリオ「そんなん手ェ貸すに決まッてんだろ。提案したの俺だぞ。」

少女「そんな私が、何か望んでいいのなら、あの「人間」たちから、逃げ出したいです」

意外なことに、少女が望んだのは復讐ではなく逃亡だった。それに対して、アーリオは

アーリオ「逃げるねェ。それで良いんだな。そいつらが悪意の発散先を取り戻しに来ないとも限らんぜ。」

少女「それでも、私に人は殺せません。」

竜の王「では、どうするのだ。君はこれからどこに行く?」

少女「よろしければ、ここで匿っていただけませんか?できることなら何でもしますので」

竜の王「そうか、いいだろう。では、これから君はここで暮らすと良い。」

そうして、2人と1体の奇妙な暮らしが始まる事となった。

5話に続く。

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