昨日何を食べやがった?

平ミノル

第1話 昨日何たべやがった



僕はある時、旅先で見かけた赤マムシと呼ばれる飲み物を買った。

なぜだかわからないが、とても興味をひかれたからだ。


父さんは、それがどういうものか知っているらしく、10歳の子供がそんなものを飲んだら鼻血を出す。といって笑っていたし、母親はきっと口に合わなくて全部飲めないと断定していた。


僕は、まだ飲んでもないのに、良くそんなこと言えるよねって、怒ったんだけど、実際に飲んでみたら本当にゲロまずかった。


そんな話を近所のミヨちゃんにしたら、ケンちゃんったら、そんなもの飲んだら蛇になっちゃうよ?といってコロコロと笑っていた。




その日の夜のこと。


空から神様がやって来て言うには、


「人間は生き物を手当たり次第に食べつくし、さらに食べ物を無駄にしておると聞く。寛大なワシもだんだん腹が立ってきた。こうなったら神の権限で人間に天罰を与えてやるから、捕食される立場の生き物の気持ちを知るが良い」


そういうと、人間を昨日食べた食物に変えてしまうという、神の力を発動したのでした。


このお告げは、すべての人類へと語りかけられたのですが、あまりに唐突な出来事だったので、多くの人は夢だったに違いないと、スルーしたのでした。





翌朝。


僕はマムシになっていた。


「なんじゃこりゃあ?!」


僕はそういいながらシャーッ!と舌を鳴らす。


僕の体は一体どうしてマムシになってしまったのだろうか。僕は泣きそうになりながら、親の寝室に向かった。するとそこにはは牛が眠っていたのである。


母さんが牛になっていたのだ。


いつも「食ってすぐ寝たら牛になる」と謎の小言を良く言われたもんだが、どうやら牛になったのは母さんの方だったようだ。


まあ、牛ならしばらくほっておいても大丈夫だろう。


そう思いながら、ひとまずこの現象について考えを巡らす。


どうしてこんなことになっているのだろうか。思い当たるのは、昨日、夢の中に出てきた神様のお告げである。


人類を昨日食べた食物に変えてしまうという、神罰のことだ。確かに僕は、昨日赤マムシドリンクを買って飲んだ。


だから蛇になったのかもしれない。


もしかしたら、人類のすべてが、何等かの動物か何かになっているのかもしれない。そう思って玄関を出てみると、牛や豚、鶏などが走り回っていた。


「やはり神罰によって、人は昨日食った食べ物に変えられてしまっているようだな」


まあ、ライオンを食った人はいないだろうから、たいていは牛か豚か鶏か魚ってことになるわけか……。


そこで思い出したのは、近所のミヨちゃんのことである。


彼女は大の魚好き。


もし、昨日の夕飯が魚だったら。


彼女が魚になっていてもおかしくはない。


心配になった僕は、あわてて彼女の家へ向かった。


家に侵入してみると、一見誰もいないようだったが、布団をめくってみるとサバが跳ねていた。

こいつはきっとミヨちゃんに違いない。


駄目だ。このままだとミヨちゃんは死んでしまうだろう。

僕は、水だ。水を用意しないといけないと思った。


そうやって、水道水をバケツに入れていたが、途中で思い出した。


「違う違う、サバは海水魚だった!」


慌てて塩を探して投入し、サバをほりこんだ。


ふぅ。


なんとか彼女は死なずにすんだな。僕は一安心した。


僕はそれから、ミヨちゃんのために、風呂場で水をため始めた。

そして、近所から塩をかき集めてきて、風呂場へ入れた。


僕は塩かげんを確認して、ミヨちゃんを投入する。


それにしても、これから世界はどうなっちゃうんだろう。

僕は考え込んでしまった。


そうやって、ふと玄関を見ると、すっぽんが歩いている。

多分、ミヨちゃんの父さんだ。


「ミヨちゃんお父さん、亀なんか食べたんだ」


僕はスッポンを食べたことはない。父さんは美味しいと言っていた。なんだか元気になるらしい。僕は子供だから良くわからないが、そういうことらしいのだ。


その時、窓がガチャーン!!と割れた。


なんだ? 外からなんかすごい音がしたぞ。


そう思って窓の外を見ると、なんと猫が狂暴化している。

もう、ゴロゴロとのどを鳴らす可愛い猫ではない。

まるでライオンのように狩りをする狂暴さだ。



それだけではない。

犬は群れを作り、オオカミのように行動している。

そして、手当りしだい獲物を襲っている。



さらに、空からはカラスだ。

カラスは空から得物を攻撃をしているようだった。


風呂場のから何か大きな物音がしてきた。

何の音かと思えば猫である。


なんとミヨちゃんを狙っているのだ。


やべ!


僕はすぐさま、猫のそばへ忍び寄り、音もなくシュルシュルと体にまとわりついて行った。

そして長いからだを猫の体に巻き付き、ギリギリし締め上げていった。



猫は最期のニャンと一泣きをして事切れた。


僕はこの時、蛇で良かったと思った。

僕が昨日、牛や豚を食べていたら、きっとミヨちゃんは猫のエサになっていたに違いない。


そう思っていたら、今度は犬だ。


犬もミヨちゃんを狙っているようだった。

ふと、ミヨちゃんの父さんの方をみると、ちゃんと手足をひっこめていた。

大丈夫なようだ。


僕は犬からミヨちゃんを守らなけばならないが、さすがに犬を締め上げるのは無理なので、今度はマムシの毒を試してみることにした。


シュルシュルと犬にかみついて毒を注入すると、犬はひとたまりもなく、すぐに死んでしまった。


そうか、おれはマムシだったっけ?

毒もってんだよな。


そうい思ったら、他の生き物に変化させられた者と比べたら幸せ者だ。とりあえず身を守れる。


・・・て、何幸せ感じてんの?? 僕。


もしかしてなじんじゃってる?

ダメダメ。人間に戻りたいっ!!


そう身もだえていたら、次は野生のカラスがやってきた。

空中を飛んで、隙を見て降りてくる。

嫌らしい奴だ。


こいつもミヨちゃんを狙っているらしい。

駄目だ駄目だ。ミヨちゃんは僕のものなんだ。


だがカラスの猛攻に、とうとう風呂場への突入を許してしまう。僕は捨て身でカラスへと飛び掛かり、黒い体へとからみついた。


僕はサバのミヨちゃんを守るために、僕は戦った。

僕はカラスにからみつき、締め上げた。


たまらずカラスは上空へ逃げていく。


そして、とうとうカラスにかぶりついた。


毒が廻りカラスは弱り、墜落していく。


落ちながら、僕も死んじゃうんだなと思った。


僕は最後にカラスへ一言いいました。


「襲ってさえ来なければ、僕は君を毒で殺したりしなかったのに、何で攻撃なんてしたのさ?」


「ほんと、余計なことをしてしまった」

とカラスはいいました。


そして後悔するようにしみじみと言った。


「藪蛇とは、まさにこういうことでございますな」


そういいながら、二人仲良く墜落していくのだった。



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