第33話 もう一人の標的

元教師が潜伏する部屋の奥から、美羽の耳に微かな物音が聞こえた。

それは、誰かが隠れて息を潜めているような、あるいは、何かを準備しているかのような音だった。

美羽は、元教師が単独で行動しているわけではないことを確信した。

彼は、まだ共犯者がいることを隠していたのだ。


五十嵐刑事も、美羽のサインに気づき、警戒を強めた。

扉をゆっくりと開けると、部屋の奥には、予想だにしなかった人物が姿を現した。

それは、木村優太の共犯者であると美羽が推測していた、鈴木先生の元教え子、佐藤健だった。

佐藤健は、怯えたような表情で、元教師の陰に隠れるように立っていた。


元教師は、美羽たちが入ってきたことに気づくと、不気味な笑みを浮かべた。

「ようこそ、私の王国へ。私の復讐劇の最終章を見届ける準備はできていますか?」彼の声は、スピーカーを通じて廃校全体に響き渡った。


元教師は、佐藤健に、モニターに映し出された学園の生徒たちの個人情報を指差した。

「佐藤君、これが君の復讐だ。鈴木先生だけでなく、あの学園にいるすべての教師と生徒の情報を、私は今、全世界に公開しようとしている。」


佐藤健の顔色が変わった。彼は、鈴木先生への個人的な恨みから元教師に協力していたが、まさか学園全体を巻き込むような大規模な情報漏洩に加担させられるとは思っていなかったのだ。

彼の目には、後悔と絶望が入り混じっていた。


美羽は、元教師の計画の全貌を理解した。

彼は、鈴木先生への復讐だけでなく、自身を追放した学園全体への復讐を目論んでいたのだ。

学園のシステムに侵入し、生徒たちの成績や個人情報、さらには学園の運営に関わる機密情報まで盗み出し、それを一斉に公開することで、学園を社会的に抹殺しようとしていたのだ。


五十嵐刑事は、元教師に投降を促したが、彼は耳を貸さない。

彼は、モニターに映し出されたカウントダウンタイマーを指差した。

「あと数分で、すべてが始まる。私の復讐の、そして学園の破滅のカウントダウンだ。」

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