第16話 秘密の扉

美羽は、健太が特定した加藤陽介のIT企業が管理する貸しスタジオの住所を、五十嵐刑事と私立探偵の大山剛に共有した。

五十嵐刑事は、美羽たちの情報収集能力に驚きを隠せない様子だったが、この情報が事件解決の決定的な突破口になると確信した。

大山もまた、美羽たちの「探偵ごっこ」を馬鹿にしていた態度を改め、真剣な表情で美羽たちと向かい合った。


翌朝、美羽、健太、五十嵐刑事、そして大山剛は、その貸しスタジオへと向かった。

スタジオは、都心から少し離れた工業地帯の一角にある、一見すると普通の倉庫のような建物だった。

しかし、その内部は、最新鋭の撮影機材や、高度なデジタル編集機器が所狭しと並べられた、本格的な制作スタジオであることが見て取れた。


厳重なセキュリティシステムに守られたスタジオの入り口で、五十嵐刑事が会社関係者に事情を説明し、捜査令状を提示した。最初は抵抗を見せていた従業員も、警察の捜査に協力せざるを得ず、スタジオの奥へと案内された。

美羽たちは、防音設備の整った一室の前に立ち止まった。

そこだけ、他の部屋とは違う、異様な空気が漂っていた。

ドアには、最新の指紋認証システムが設置されており、関係者以外は立ち入りができないようになっている。


「おそらく、この部屋が『シャドウ』の拠点、そして桜井楓さんのなりすましが行われていた場所です。」美羽は確信を持って言った。

五十嵐刑事が、指紋認証システムを解除するよう指示すると、会社の担当者が渋々ながらパスコードを入力した。


重厚なドアが開くと、そこには、楓がSNSで頻繁に投稿していた「#今日のコーデ」の背景に映り込んでいた、あの観葉植物が置かれていた。

美羽は、その植物の葉の向きが、自分の記憶と寸分違わないことを確認した。

まさに、この場所こそが、楓の「虚像」が作られていた場所なのだ。部屋の中には、複数の撮影機材、グリーンバック、そして合成音声作成機材が設置されており、床には、楓の直筆で書かれた契約書の断片と、誹謗中傷に苦しむ走り書きが散らばっていた。

美羽は、ここで楓が精神的に追い詰められ、そして何らかの事件に巻き込まれたことを確信した。

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