曲者

いつもの道、角を曲がり大きな門を潜る。


このお屋敷があたしの生まれ育った家。


「ただいまー!!」


「お帰り嬢ちゃん!今日も麗しいご尊顔でんな」


「お帰りなさい、いとさん。お疲れ様ですわ」


家に入ると先に家にいた2人が出迎えてくれる。


関西弁の男が「難波笑太」、物腰柔らかなお嬢様が「天上咲姫」。


2人ともあたしの部下で、咲姫ちゃんはあたしと同い年だ。


「嬢ちゃんも今日はお仕事でっしゃろ?学校終わってその後すぐ仕事っちゅーんわ大変でんな!」


「ううん、平気!」


難波はコテコテの関西人で、人の懐に入り込むのを得意としている。

糸目を弧を描くようにぐーんと曲げた笑い顔は人好きのする顔立ちらしく、他者からあまり警戒心を抱かれないのだとか。

彼の話自体はあまり面白くないのが玉に瑕である。


「今日はどなたとお仕事ですの?」


「えーっとね、そうだな〜今日はシゲちゃんかな」


「阿久井様でしたら、今は2階の展示室にいらっしゃると思いますわ」


「そっか、ありがと!呼んでくるね!!」


咲姫ちゃんは絵に描いたようなお嬢様って感じの子。

同い年なのにあたしより落ち着いていて、お姉様って感じ。

表向きはあたしと仲良くしてくれて可愛がってくれるんだけど、内心ではあたしのことをライバル視して蹴落とす機会を狙ってるみたい。

本人は気づかれてないと思ってるみたいだし、お父様からの評価を気にして部下としての仕事はきちんとやってくれるから、何を思ってようと全然無問題!!!


あたしは鼻歌交じりに階段を登ると、2階の展示室に向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る