霊災事例① 廃村の少女
◼️ 死霊系モンスター報告書(概要記録)
報告者 :D級冒険者パーティー リーダー
遭遇日時:第七月 午後六時
発見場所:廃村「ネルダ」付近(他任務中に遭遇)
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◼️ 目撃内容(抜粋):
・フードを深く被った少女のような外見。外見年齢は人間の10歳前後。
・顔部には空洞状の闇が広がっているように見えた。
・声を発し、「かえして」「かえして」と数回繰り返す。文脈・意味は不明。
・パーティーの魔法使い(D級)と戦士(C級)が攻撃を試みたが、いずれも効果なし。
・神官(Dランク)の聖光術が一時的に有効(約3秒停止)。
・戦闘後、一人の仲間が笑い始めた後、そのまま昏倒・昏睡状態に。
・仲間が笑い始めた時点で当該死霊存在はいつの間にか消えていた。
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◼️ ギルド窓口への報告内容 詳細
お疲れ〜、今日もきれいっすね。……って、お世辞言ってる場合じゃなかったわ。
実は、ちょっと、ヤバいやつに出くわしちゃってさ。マジで、これは“霊災”ってやつかもしんない。ほら、俺らD級だしさ、場違いなもん踏んだらすぐ戻るって決めてるんだけど……今回はほんと、マジで正しい撤退だったと思ってる。うん。
ネルダってあの廃村、知ってる? 何年も前に疫病で全滅したって噂のとこ。まあ、そういう場所って普通避けるんだけど、たまたま他の魔物調査のために行ったわけよ。簡単そうな依頼だったし!
村の入り口あたり、井戸の跡がある場所でね、人影を見つけたんだよ。こっちには背を向けてた。他の冒険者かな?って思ったけどさ――違った。うん、そう。背丈は小柄で、10歳くらいの女の子に見えた。他のパーティーも来てんのかな?って思ったけど、冒険者になったばかりにしても小さいから、一応声をかけておこうと思ったんだ。
彼女?は一人だったし、心配じゃん? んでさ、近づいたら、いきなりこっちに振り向いて。俺びっくりしちゃったよ。そいつ、フード深くかぶってて、顔が見えなかったの。……いや、“見えない”って言うより、“無かった”。顔のところだけが、なんか闇が渦巻いてるような空洞になってて、底が見えない、黒い穴みたいな……正直、寒気した。
そいつが、唐突に喋り出すのよ。『かえして』って。しかも、感情ゼロ。繰り返すだけ。『かえして』『かえして』……なんか、こっちの頭に直接響いてくるみたいな声だった。誰も意味はわかんなかったけど、なんか、よくわからないんだけど、何かを失ってる?恨みがある?そんな感じでさ。
うちの魔法使いが反射で火球飛ばしたんだけど、全然効いてない。空間に吸われたみたいに、火が霧散して。戦士のやつも斬りかかったけど、すり抜けるように手応えゼロ。もう完全にこの世のものじゃない系で。情けない話だけど、俺、ビビっちゃってさ。動けなかった。リーダーなのにダサすぎて笑っちゃうよね。
そこで神官が祈りの言葉を詠唱してくれてさ、そいつ、一瞬だけピタッと止まった。三秒……いや、四秒いかないくらいかな。動かず、じっとこっちを向いてた。いや、顔は空洞なんだけどね?……で、すぐまた動き出しそうになって、こっちはもう撤退モード。
でも、問題はその後。騎士のやつが、撤退途中でいきなり笑い出したのよ。『フフ……フフ……アハハハハ!』って。最初、パニックかと思ったけど、目が笑ってなかった。完全に正気失ってて……そしたら急にガクッて倒れて、そのまま倒れちゃった。で、気づいたら、あの女の子の姿はどこにも無くなってた。気がついたら、そこにいなかったんだ。
……倒れたやつ、今も起きてないんだ。治癒魔法は完全に効果なし。解呪と聖句は全部試したけど、俺の知りあい、そんなに聖職系のジョブで高ランクのやついないから、効いてんのかわからなくて。
というわけで、これはもう素人レベルじゃどうにもならん、って判断して。そこそこ厄介なやつなんじゃないかなって。だから、相談してるってわけ。
そんな感じっす。とりあえず、他にも似たような報告あったら教えてくれると助かるし、あいつのこと、上級神官サマとかに診てもらえたりしないかな……?
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◼️ 現象の推定:
死霊による精神干渉型の霊災(四等)。精神攻撃の兆候あり。
過去の報告・資料に類似するモンスター情報は確認されていない。
発生地点が複数の村の境界部に近く、集団失踪事件の伝承が残る地。
地元で語られる未解決の「死者の行進」伝承との関係が疑われている。
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◼️ 霊災等級:
※調査報告待ち
四等相当(死亡例無し。上級神官で対処できる可能性あり。)
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◼️ 対応:
ギルド本部より上級神官(A級以上)を中心とした調査団の派遣が決定。
同様の現象報告が他地域で確認された場合、通報要請。
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