椿の葉
ああ、お客様!困ります!
ここは質素なものたちが集う場所なのですよ!
決して、高貴な方は。
え?あ、違うのですか。そうですか。
どうぞお入りください。
いえ、また叱られてしまうのかと思ってしまいました。
先日もメイドが酷く叱られて、また太ってしまって。
そうすると人手が足りなくなってしまって、外から足されてはいるんですが
そうしたら、また減るんです。
管理がなってないとご主人様に叱られてばかりです。
お屋敷のことですか?
私たちは随分と長くここにおりますよ。
大旦那様の代からおります。あちらのメイドはもう少し前でしたかね。
きちんとはわかりませんけど。
え?ええ。お話を聞きたいのですか。かまいませんよ。
お屋敷には沢山の方がおいでになります。
殆どの方がお食事などはなさらないので、外に出ることは少ないですね。
けれどお茶が好きな方、お酒が好きな方がいらっしゃいますから、外からの
行商人は時々あって、皆様がお好きそうなものを選んでいます。
仕事は楽しいですよ、お洗濯をしたり、お掃除をしたり。
時々、皆様のお部屋に、一人で行くこともありますが。
何をしに?
いいえ、そんな滅相もないことですよ。
ただ、私はお嬢様のお部屋に行くのがとても好きですね。
皆様、とってもお優しいのですが、お嬢様はとても甘美で。
熱に浮かされて夢見心地になります。
すいません、はしたないですね。
お屋敷の恋人について?
恋人ですか。
よくは分かりませんが、どなたからそれをお聞きになったんですか?
多分、メイドたちは知らないかと思います。
主人のことは皆、把握しているはずですよ。
ええ。
もし、お仕えしていない方がいらっしゃるのなら、私たちはすぐに探して
その方にもご奉仕しなければいけません。
もし、お会いになったら教えていただけますか?
私たちもすぐにお探しします。
ああ、どうしましょう。どのような方でしょう。
どうして知らない方がいらっしゃるのか。
私たちの不備ですわ。
叱られても仕方ありません。
あのメイド長は長い間部屋に入れられて、叱られたそうです。
だから足が使い物にならなくなったと、今も時々。
叱られるのは怖いですが、嫌ではありませんよ。
皆様も悲しそうな顔でそうされるのですから、私たちごときが
嫌だなどと言う権利はありません。
このお屋敷にいる人たちは皆様穏やかな方たちばかりですから。
新しい方、恋人様はどういった方でしょうか。
お探ししなければ、ご奉仕しなければ。
胸がうずきますね。
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