【マティアスとウェスティ】

一方、マティアスとウェスティは──



「本当は2人きりが良かったんだけどなー……」



「それはもう少し後の方が良いよ。絶対暴走するからね。」



「はは、信用ねぇなぁ、俺。」



まあ、仕方がないと苦笑する。


フッと笑い、言葉を発したウェスティ。

だが、周りの歓声にかき消され、その声はマティアスに届かなかった。



「今何つった!?」



「何でもない!ほら!また上がったよ!」



4万発の花火が上がるニューヨークの花火大会。

その花火を2人は船の上から観賞している。


イースト川に浮かぶクルーズ船。


たくさんの家族やカップルに混じり、夜のデートを楽しんでいた。



次々と上がる花火を見上げ、一人苦笑するウェスティ。


『それでも好きだけどね。』


思わず言ってしまったその言葉。

聞こえなかった事にホッとしていた。



「ウェスティ。」



耳元で聞こえた声にビクッとする。

テーブルの向かい側にいたマティアスが、いつの間にか隣に来ていたのだ。



「お、驚かすなよ、びっくりしたじゃないか……。」



「悪ぃ……。」



ははっと笑ったマティアスが真顔になる。

一体何事かと身構えるウェスティ。



「な、何だよ、あたしが何かしたのか?」



「いや……。俺がこれからするんだ。」



「って、何する気!?」



再び彼女が身構える。



「ほんと、信用ねぇな……。」



ため息をついたマティアスが、ずいっと顔を近づけて。

慌てる彼女の首に手をかけた。



「な、何を、」



「俺からのプレゼントだ。安物で悪いが……お前に似合いそうだったからさ……。」



首に着けられた物を触った彼女が一言。



「く、首輪!?あたしを飼い慣らすつもりなのか!?」



「ばっ、誰が首輪なんか贈るか!チョーカーだっつーの!」



「チ、チョーカー……?」



確認しようと鏡を探すが見当たらない。

ふと目についたのはステンレスの皿。


鏡のようなその皿に、自分の首を映して確認した。



「は、はは、格好いいじゃないか……。」



そう言った彼女の顔は嬉しそうだった。



「気に入ったか?」



「ああ。やっぱり好きだよ、あんたの事──って、違っ、」



今度のうっかり発言はしっかりマティアスに届いたようで。



「わははっ、俺もお前が好きだ!」



嬉しさ爆発で抱き締められてしまった。


もがこうとしたウェスティだが、恥ずかしさよりも嬉しさが勝ってしまい、そのままマティアスの腕の中にいた。

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