【神にも勝つ日本人】

「どんどん食べて下さいね。ほら、シヴァも食べて下さいよ。」



自慢のソースでバーベキューを振る舞うシャスタ。

食の進んでいないシヴァに声をかける。



「悪ぃ……食えねぇ……」



「えっ、ソースが口に合わないんですか?」



ふるふると首を振る。

そのシヴァの隣では、ガルダが笑いながらバーベキューを食べていた。



「何でお前は食えるんだよ。」



「ディアが食べさせてくれるならいくらでも食べられるんです。あの大会もディアが食べさせてくれたら優勝できたのにね。」



あの大会と聞き、理解した。



「ニューヨークに行ってたんですね?」



「ああ。大食い大会に参加したんだ。けど負けた……。」



「優勝は日本人でしたよね。あの細い身体のどこに消えたんでしょうね、大量のホットドッグ……。」



「さあな……。ってわけだ。しばらくしたら食えるかも知んねぇから、その時にまた焼いてくれよ。」



「仕方ないですね。まあ、夜まで続きますし、後で食べて下さいよ。」



かぶりを振りながら調理に戻るシャスタ。

機嫌を損ねてしまったと、苦笑するシヴァだった。



「楽しんでますか?」



アレックスがファネットに問いかける。



「ええ。お見合いの時の宴会と違って暖かい感じがするわ。」



「ナイト家だけのパーティーですからね。普段はこんな感じなんですよ。」



頷き、家族を見回すファネット。

暖かいファミリーに笑顔が浮かぶ。



「やって行けそうですか?」



「え?」



「家族の一員として……。」



首を傾げる。

意味が分からなかった。



「いや、その、俺と結婚したらなるわけだし、下界での生活とか、色々と、」



ハッとしたファネットが、言いたい事を理解して微笑んだ。



「大丈夫よ。私、この家族が好きだから。」



天界人と人間が暮らすナイト家。

愛に包まれた家庭はとても居心地が良かった。



「好きなのは家族だけ?」



そう尋ねるアレックスの顔は、何となく不機嫌そうに見えた。


その理由もファネットは理解している。

お見合いの日に知った彼の性格は──



「家族よりも……アレックスの方が好き……。」



ふふっと笑ったファネットにドキッとする。


控えめに見えても彼女は天界人。

ペアのアレックスに遠慮はしない。

ストレートに愛情をぶつけて来るのだ。



「はは、ありがとう。俺もファネットが一番です。」



微笑んだアレックスが彼女の頭にキスを落とす。

そのまま寄り添い、バーベキューを楽しむ家族達を眺めていた。

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