永遠の時をあなたと/外伝【ザ・フォース・オブ・ジュライ】

SHINTY

インデペンデンスデイ

デートのお誘い

【奥手な初心者兄弟】

お見合いパーティーから数週間が経った頃。

FLAGの任務が一段落し、心に余裕が出て来て叫び出す。



「ウェスティに逢いてえ!」



間近で叫ばれ、苦笑するアレックス。



「俺もファネットに逢いたいですよ。」



「だよな!逢いたいよな!」



同士を得たマティアスが、アレックスに肩組みして空を見上げた。



「逢いに行けば良いでしょ?別に禁止されてる訳じゃないんだし。」



余裕綽々とそう言ったのはセフィーナだ。

彼女の左手の薬指にはリングがある。



「簡単に言うなよ!ディノルドと一緒に住んでるお前とは違うんだからな!」



「ほんとですよ。連絡もせずにいきなり行ったら何て思われるか……。」



下界と違い、天界との通信手段は何もない。

突然訪問したら迷惑に思うかも知れない。



「ペアなんだし、喜んで迎えてくれるんじゃない?」



「だから簡単に言うなっつーの!嫌われたら責任取ってくれんのか!?」



「えー、何で私が。というか、何でそんなに臆病なのよ。いたっ!」



ゴツッと額に拳が入る。



「ヤりまくりのお前と違って俺らは初心者なの!初心を思い出せこの野郎!」



言われて思い出したセフィーナが、額を押さえてあははと笑っていた。



「でも、お見合いの時以来逢ってないでしょ?逆に嫌われちゃうんじゃない?」



うっと言葉に詰まるマティアスとアレックス。

正直、仕事のせいにして逃げていたところはある。


そんな二人を見てため息をつくセフィーナ。



「シンとタナトスみたいにガンガン行けば良いのに。」



「いやいやいや、俺らには無理だって。シンは女に慣れてるし、タナトスは攻めタイプだからな。」



「はは、ナンシーさんの遺伝らしいですね、タナトスの攻める性質は。」



「え、そうなの?ガネ兄ちゃんの遺伝じゃなかったの?」



意外だと驚くセフィーナに、父上から聞いたと話す二人。



「俺も聞いた時は意外だったもんなー。ガネ兄ちゃん、タジタジだったらしいぜ?」



わははと笑うマティアスだが……



「……俺も攻めてみようかな。」



聞こえた台詞に驚き笑い止んだ。



「攻める!?お前が!?」



「いや、だって嫌われたくないし、」



頬をぽりぽり苦笑するアレックス。



「けどよー、強引すぎても嫌われるんじゃねぇか?」



「で、ですよねー……。」



恋愛初心者には難しい駆け引き。

どうしたものかと唸るしかなかった。



「やっぱ無理だ!一回やってるからなー、俺……。」



お見合いの日の部屋での出来事。

ウェスティに泣かれるのは二度と御免だ。


だから臆病にもなる。


逢って愛情が爆発したら?

また彼女に泣かれたら?


それが怖くて踏み出せない。



「俺も無理ですね……。はは、俺に攻めは似合わないでしょ?攻めた時点で嫌われますね。」



「確かにな。お前に攻めは似合わねぇよ。」



やっぱりと苦笑する。

だからアレックスは趣味を秘密にしているのだ。



「気持ちは分かるけど、このままじゃ確実に嫌われるわよ?ウェスティさん達にしたら放置されてるようなものだし。」



確かにそうだと狼狽える。



「そ、そうだ、プレゼントを贈るのはどうですか?」



「それ良いかも。手紙を添えてデートに誘えば良いのよ。それなら突然の訪問にならないでしょ?」



「だな!それに決まり!」



「あ、でも、どうやって届けます?」



自分達が直接届けたら、それは突然の訪問になってしまう。

再び悩む彼らのもとに、一人の女性がやって来た。



「あんた達、そんな所で何してるの?」



彼女の姿を見た3人が、顔を見合わせ頷いた。

強力な助っ人の登場である。



「そんなわけで、母さんに橋渡しして欲しいんですが……。」



「愛の女神なんだし、可愛い息子の為にも頼むよ……。」



頭を下げる息子達にため息をつく。



「それでもパパ達の息子かしら。情けないわね……。」



「初心者なんだから仕方ないだろ!?母さんも初心を思い出してみろよ!」



言われて思い出す。

反応が怖かった機械相手の恋。


恋愛感情がないと思っていた為、自分の気持ちを伝える事ができなかった。

簡単に逢う事もままならず、偶然の再会に期待して過ごした虚しい日々……。



「やだ、ウェスティもファネットもあんた達を待ってるわよ?女を待たせるなんて最低ね。」



「だから頼んでるんだろー?」



まあ、二人が臆病になるのも分かる。



「仕方ないわね、届けてあげるわよ。あ、誘うなら今度の祝日にしなさいね。」



「祝日……?」



「あ、そういう事ですか。はは、ムード満点ですね。」



アレックスの言葉で気づいたマティアスも、その日なら完璧だと頷いていた。



「それで?プレゼントは用意できてるの?」



「いえ、これから……」



それなら早くしなさいと言われ、走る二人。

残ったセフィーナがそれを見送りため息をついていた。

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