壊したい文化
クライングフリーマン
寝たら最後
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
「寝たら最後。よう覚えておかにゃあいかん。おみゃあさんの命は、おみゃあさん自身で守らにゃあという状況でかんわ。」
名古屋弁で、名古屋弁のような語り口で、どこからかスピーカーからの音声が流れていた。
どこかの温泉場に違い無いが、どこかは分からない。
罪財務省主計局の三谷澤与一は、自分が椅子に括り付けられ、温泉に向かって15度傾いていることは分かっていた。
この声の主は、最初は『クイズ』と言っていたが、これは拷問だ。
「『選択せえ夫婦蔑せえ』、言う制度はよう。はやあ話、『戸籍を壊したい』んじゃなくて『扶養家族を無くしたい』んじゃにゃあのかね?回りくどくて、なかなか本決まりしないのに『待ち切れん』と『ねんきん配布改革』やったんではにゃあのかね。勿論、『遺族年金』で国民は怒ってる。でもよう。『扶養家族・親族の定義とメリット』を並べると、こうなる。1.所得控除における『控除対象扶養親族』『控除対象配偶者』に該当する家族・親族は『扶養者・被扶養者の税負担を軽減できる』。これが揉めた『壁』だわ。2.『厚生年金保険における被扶養者に該当する配偶者』は『被扶養者は第3号被保険者として国民年金に加入でき、年金保険料の支払いは免除される』。詰まり、旦那さんが会社員で社会保険にへえっとりゃあ、奥さんは、年金払うこたあにゃあってことだわな。3.『扶養者の加入健康保険における被扶養者に該当する家族・親族』は『被扶養者は扶養者の健康保険に加入でき、健康保険料の支払いは免除される』。詰まり、奥さんは健康保険料を『個人で』払うこたあにゃあってことだわな。『国民年金や国民健康保険、各国民健康保険にはない扶養制度』が『社会保険上の扶養制度』が『じゃあむしょう』には、目障りがにゃあ、ってことだ。大陸の国の命令もあるだろうが、おみゃあさんたちは、『取りっぱぐれ』に固執した。『壁』を緩めるどころか『撤去』したのもこのためだ。」
その時、三谷澤の体が前に傾いた。
眠いのだ。入眠剤を飲まされている。睡眠薬ではないが、入眠剤は、時間が経てば効いてくる。
「寝たら、落ちるよ。さっきも言ったろうが。『選択せえ夫婦蔑せえ』を急がしたのは、『この子誰の子?』が問題じゃにゃあ。ぎゃあこくじん、特に大陸人にない恩恵をなくして、『働く人口増やして税金増やすぞキャンペーン』だからだ。日本人と結婚すれば恩恵に預かるが、大陸人に取って『家畜』みたいな民族との交配をすると穢れるってかんぎゃある輩もおるしな。返事はどうした?さっき、姓名尋ねたら、素直に母国の氏名を言ったではにゃあかね。今、指摘したことに異論があるなら言うてみりゃええが。」
「何者かは知らないが、証拠はあるのかね?」
「あんたらが大事にしている『大黒様』の下にあったでかんわ。返事を聞かせてちょうよ。」
「開放したら、教えてやる。」「教えてやる?」
椅子は90度まで傾いた。
三谷澤の汗と涎、糞尿がバスタオルを伝って落ちた。
「あ。ご・・・ごめんなさい。貴方の言う通りです。全て間違いありません。だから、許して。開放して!!お願いします。」
その瞬間、四方の『壁』が『開いた』。
500人以上のカメラマンのフラッシュが焚かれた。
温泉場は、セットだった。カメラマン達の向こうに山が見えた。
見慣れた山だ。
ここは・・・日本じゃない。
三谷澤は思い出した。
「いつもの乙姫様」とは違う美女が案内してくれ、サケを飲んだ。
サケの酔いが冷めると、裸で吊されていた。
カメラマン達の向こうに、この国の軍人達がいた。
三谷澤は覚悟した。もう日本には帰れない。
待っている世界は『冥土』、いや、地獄だ。
離れて見ていた日本人がいた。
「『この世界』も腐ってるな。」
黄砂が流れてきた。
―完―
壊したい文化 クライングフリーマン @dansan01
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