劇中檄

日々、積んだ出来事さえ私から離れフィクションへ

宇宙の旅とは程遠い

誰も気付かないだろう瞼の裏で流れてる

文字化けしたスタッフロールを、せめて笑う

誰も見てないなら救われるなって

ハッピーエンドは、そう安くない


月明かりが照らす椅子は誰も座らない方が美しいだろう

窓はとっくに割ってあるから、逃走劇だけ醸し出して終わらせれば良い

死体はベッドの下にでも隠して

自業自得という仕掛けのミステリー

低予算だけが根拠のノンフィクション

そうやって隠れ一人陰謀論


物語は続いてるって、本当の私は生きてるって

海岸に立って一人、海面の射影機。ぼやけてる。

振り返れば光る街並み。呆けてる。

フィルムから漏れた光ザーザー掠れたフィルム

モンスターしゃがれた悪夢セーラー夜の海を見る

被せたのに物語は止まらないままの今

映らないまま終演時間まで刻むタイマー

続編だけ決まってる始まらないドラマ



ヒビ割れた飴細工さえ私の喉に刺さり、重傷に

無傷の貴方が神々しい

誰も傷付かないだろう事実に今尚、うなされている。

靴擦れしたスタートダッシュを、脚が嗤う

離れ逃げられないなら、掬われるなって

ビターエンドの妄想、甘くない


次、明かりが灯るなら、私以外の誰かが幕も開けずに俯くシーンだろう。

縄はとっくに吊るしてあるから、逃走経路、晒し上げて燃やしてしまえば良い

死体はペットの餌にして潰して

自暴自棄というたわけのヒストリー

嫌悪感だけが防御のインセプション

襲う躍起、隠れ酷い観念論


役作りで躓いてるって、本当の私が生きてるって

断崖に立って一人、岩盤の遮断器。こわれてる。

振り返れば迫る人波。見られてる。

フィルムから漏れた叫びルーザー外れたリズム

モンスターひしゃげた欠伸ドーザー夜の土を掘る

被せたのに物語は終わらないままの今

座れないまま開演時間まで刻むタイマー

続編だけ決まってる休まらないトラウマ



ただ正確に何かを映し出したい一心で心臓止まる

ただ贅沢に誰かを助け出したい一心で心臓止まる

見つけ出したい一心で心臓止まる

テイクを重ねて夜に一人の貴方を救いに

日々、詰んでいく。日々、摘んでいく

ヒビ、腫れていく。日々、晴れていく


物語は紡いでくって、本当の私で生きてくって

念願に立ってペトリ、快晴の射影機。映してる。

振り返れば辿る道のり。眺めてる。

カルーセルに乗り、物語は止まらないままの今。

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