第5話 シャキーン!ウチ、キマってるっしょ!
町を歩き回り、女の子にビーズアクセサリーをあげたり、見知らぬ人と意味もなく挨拶を交わしたりと、戦国時代を全力でエンジョイした友乃。ついにその探索にも満足し、町を後にすることにした。
「じゃあねー!政宗マジLOVEって感じ〜!また来っから!バイバイキーン!」
町の人々がぽかんと見送る中、軽く手を振ってその場を後にする友乃。砂ぼこりが舞う道を歩きながら、ふと前方に目をやると、道端に倒れている一人の武士の姿が目に飛び込んできた。
「え、なにあれ?マジやばくない?」
友乃は慌てて駆け寄り、倒れた男に顔を近づける。男は苦しそうにうめいていた。
「うう……脚が……折れたかもしれん……。私はこのまま野垂れ死ぬ運命なのか……」
「ちょ、ヤバいってば!そんな雑な最期はダメっしょ!」
友乃は躊躇なく男の腕を引き、自分の力でなんとか立たせると、近くにいた馬を引き寄せ、その背に彼を乗せた。
「よいしょっ……っと!てかオジサン、どこ向かってたの?」
ぼんやりとした表情のまま男は答える。
「仙台藩……政宗様に書状を届けに……って、お前、馬に乗れるのか?」
その問いに、友乃は自信満々に笑って言った。
「雑誌の撮影で乗ったことあるし!ギャルって意外と何でもできちゃうんだよね〜。てか、ちゃんと掴まってないとまた落ちるよ?こっからはウチが送り届けてあげるってば!」
そう言って、自らも馬にまたがり、手綱をギュッと握る。その姿はまるで、現代から来たナイトのようだった。
馬を操りながら仙台へと急ぐ友乃に、武士は驚きと感謝を隠せず、ふと尋ねた。
「お前のような奇抜な装いの娘が、何故ここまでしてくれるのだ?」
「んー?ギャルってね、見た目派手でも中身はアツいんだよ?人助けって、当然じゃん?てか、政宗LOVEだから放っとけなかっただけ〜!」
そのまま城まで走り抜け、ついにまたしても仙台城の門前へと帰ってきた。馬上の友乃を見た見張りが、目を丸くして叫ぶ。
「ま、またお前か!?今度は何だ!?」
「落ち着いてよー!今回はさ、マジで真面目な用事なんだから!」
そう言って馬から降り、ぐったりした武士を支えながら説明した。
「このオジサンさ、政宗に大事な書状を届ける途中で脚やっちゃってさ〜。だからウチが代わりに送り届けたってワケ!」
見張りはすぐに事態の重大さを察し、「中へ通せ!この者にすぐ手当を!」と叫び、門が開かれる。
そして――友乃は、またしても伊達政宗の前に立っていた。
「ちゃっかり戻ってきちゃった〜。でも今回はマジで人助けだから!さすがに怒らないで?」
政宗は一瞬驚いたようだったが、すぐに落ち着いた表情で武士に尋ねた。
「何があったのだ?」
武士は痛みを堪えながら口を開いた。
「政宗様……この書状を届ける途中、落馬してしまい……脚を折ってしまいました。ですが、この娘が助けてくれたのです……」
震える手で政宗に書状を差し出すと、政宗はそれを受け取り、目を通す。そして静かに頷いた。
「ふむ……この書状は重要なものだった。無事に届いたのは、お前のおかげだな。」
彼は友乃の方をまっすぐに見て、感謝の言葉を口にした。
「礼を言う。お前のような者が、今の我が世にも必要だ。」
「え〜、そんなマジメに褒められると照れるんだけど!ウチ、ただ助けたいって思っただけだし?戦国でもギャルって最強だからさ!」
友乃の明るい返しに、政宗も思わず微笑んだ。
「その心、忘れるな。困っている者がいれば、また手を差し伸べてやれ。そして、もし再び訪れることがあれば、歓迎しよう。」
「え、マジ?やったー!そのときはまたずんだもちよろしく〜!」
冗談交じりに笑う友乃に、政宗は満足げに頷く。その光景を見て、周囲の者たちも自然と微笑んでいた。
城を後にした友乃は、夕焼けに染まる道を歩きながら小さくつぶやいた。
「やっぱ、どの時代でも“自分らしく”って大事だわ〜。ウチ、戦国でもギャル道ぶちアゲていくからね!」
夕日に照らされたその背中は、時代を越えて輝いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます