第26話「異色の交流会」

数時間前

いぬおがいぬこを連れ出し外へ出かけていく光景を部屋からたまたま見ていたリューコ。

背伸びをし部屋を出る。


「朝早くからどこ行ったのかしら。…まぁ…いいけど。」


欠伸をしながら廊下を歩いてリビングへ向かう。

玄関で誰かが立っていると思ったら椿に会った。


「ん?椿?」


リューコの声に反応し椿は振り返る。


「お?リューコか。どうした?」


「いや…どうした?なのはこっちのセリフよ。アンタこそ何しに行くの?買い出し?」


「まぁ…ちょっと頼まれ事だ。」


「ふーん…。じゃあ…気をつけていくことね。」


「おう。帰る時いぬこたちと帰ってくるから。よろしくなー。んじゃ!行ってくる。」


ばたんと扉を閉じた。


「頼まれごとね…。」


リューコは呆れの溜息と同時にコップに水を入れる。

窓際から見える景色は平和そのもの。

そんな光景を見て先日のいぬこに打ち明けた事実を考え込むリューコ。


「…………。こんなにも平和な世界が滅ぶ。か。」


ボソッと小さくつぶやいたあと水を一口含み飲み込んだ。


「おはようです。リューコさん」


気配もなく後ろからツキノに話しかけられると思わずびっくりしてしまうリューコ。


「ぶっ!?」


反射的に水で噎せ返る。


「けほっ!けほっ!音もなく気配も消すな!びっくりするでしょうが!!!」


「わわっ!?大丈夫ですか!?あ、すみません…そんなつもりはなかったんですが…ごめんなさい!」


「………ったく…。」


不機嫌そうなリューコは口元をハンカチで軽く拭くとソファに寝転がりくつろいでいる。


「いぬこさんたちはどこかに行ったんですか?」


「わからないわ。ん?それよりシスティは?」


「そうなんですか…。あ、システィですか。多分もう来ますよ。」


部屋のドアが開く音が聞こえ、廊下から足音が近ずいてくる。


「おはよ。2人とも。」


軽く挨拶を済ませソファに腰を下ろすシスティ。


「2人は何の話してたの?」


「ボクもさっきリューコさんに声かけたばかりでそんなに話はしていませんが、いぬこさんたちが見当たらなかったので、どこかに行ったのか?とリューコさんに尋ねていたところですよ。」


「ああ。そうだったの。それで結局いぬこたち何処かに出かけたみたいなのね。」


「らしいですよ。」


「へー…。」


「アンタ達、だいぶ馴染んだわね。数日で。」


「おかげさまですよ。」


「ほんとね。最初来た時はほんとガチガチで緊張してて本当に今思えば恥ずかしいわ。」


「まぁ…今の方がとても自然で話しやすいからリューコはこの方が楽だからよかったわ。」


「そうですか…なんだかうれしいですね!そう思いませんか?システィ!」


目を輝かせながらツキノはシスティを見ている。


「キラキラさせないでちょうだい。」


「あ、そうです!せっかくですから交流も兼ねてボク達も何処か一緒に行きませんか?」


「行くって言ってもどこがあるのよ?私達まだここに来て日も浅いし、情報が少ないから下手に動いて面倒事でも起こしたりしたら…」


「はぁ…。仕方ないわね。」


会話が弾む中でリューコがため息を吐きながら席を立つ。


「私が先輩として案内してあげるわよ。」


こうしてリューコ、ツキノ、システィの3人で江野町商店街へと向かうのだった。











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