第23話「明かされた真実」
朝食が済み、落ち着いた時間が訪れる。
再度一同がテーブルを囲み本題へ。
「さっきはごめんなさい。ご飯凄く美味しかったです。」
いぬこが優しげな表情で2人を見つめながら言葉を返す。
「よかったぁ…さっきより顔色も良くなってるし安心したよ。」
システィとツキノの表情は真剣なものに変わり本題の話をしようとした時リューコが待ったをかけた。
「それでなんですけど、私達は…」
「待って。」
リューコは以前、椿がいぬこを訪ねて来た時も同じ様に止めた事があった。
いぬこは不満げにリューコを見つめながら呟く。
「リューコ。今回も、私はいないほうがいいの?」
リューコはいぬこのその言葉に罪悪感を感じつつ意を決したようにいぬこの目をしっかりと見つめて話す。
「いいえ。1から話すわ。今度はちゃんと話す。タイミングを考えていたのよ。この話は本当に大切な話だから。今まで黙っていてごめんなさい。」
「………わかったよ。ちゃんと聞くよ。」
「ありがとう。いぬこ。」
状況がうまく飲み込めないまま置いてけぼりのシスティとツキノに軽く説明。
「なるほど…話を続けましょう」
「理解が早くて助かるわ。」
リューコが先陣を切るように会話が始まる。
「単刀直入にツキノもシスティも私や椿と同じで別々の異世界から来た存在なんでしょ?」
以前にも椿が口にした言葉。
「異世界」という言葉。
この言葉にツキノとシスティも思わず息を呑む。
「その通りです。ボクはとある存在に協力を求められここに来ました。」
「そうよね。私も同じ。」
「いぬこ、いぬお…今から言う事はこの世界に関わることだし、今後話を聞いて後戻りもできない。言うべきか悩んでいた。けど、椿、ツキノ、システィがこうして出てきた以上、これ以上は無意味と感じたわ。」
リューコの言葉を聞いて椿も続いた。
「俺達の目的は厄神っつう奴が引き起こす災厄。この世界の崩壊を止めることだ。」
「……………。」
いぬこといぬおの表情は険しくなり空気が一変。
「え…崩壊って…この世界がなくなっちゃうってこと?」
「その通りよ。」
リューコの表情は変わらず真っ直ぐにいぬこを見つめていた。
何かを察したのかいぬおがリューコに尋ねる。
「リューコ。その崩壊に姉貴が関わっているのか…?」
怖々といぬおはリューコに視線を向け返答を待つ。
少しの沈黙の後、その口元は動き出す。
「いぬこの中には厄神が眠っている。」
「……え?」
「それって…つまり…」
「いぬこの身体を内側から乗っ取った厄神がこの世界を滅ぼす。」
「……………そんな………。私が…この世界を…」
「…………嘘じゃないんだな?」
「嘘に見えるなら貴方の目はどうかしてるわ。」
リューコの鋭い視線はいぬおをギロリととらえる。
視線からは揺らぎのない真っ直ぐな意思を感じたいぬおが生唾を飲む。
「崩壊はいつ起きるか、現時点では私達も手探りでわからない。だから…様子をうかがっていたわ。」
「…そうなんだ…。」
「いぬこ…私達は貴方を必ず救ってみせるわ。」
リューコはソファから立ち上がりいぬこのもとへ駆け寄り震える手を優しく包み込む。
「リューコ…私…どうなっちゃうんだろ…怖いよ。」
「大丈夫だ。俺もいる。」
気がつけば椿も重ねるように二人の手を包みこんで寄り添っている。
続くようにツキノ、システィも上乗せするように包み込み重ねていく。
いぬこの表情は何かが限界を迎えた様にボロボロと涙がこぼれ出す。
「皆…ありがとう…」
「………俺も姉貴を守るから。」
「いぬお…。」
「姉貴が困っていたら助ける。俺じゃ至らないかもしれない。でも、皆がいる。だから…任せろ。必ず何とかしてやる。安心しろ。」
堪えていた感情や不安を吐き出した後、いぬこは疲れ果てて眠りに落ちる。
いぬおがいぬこを運び部屋のベッドに寝かせる。
目元は少しばかり赤くなっている。
髪を優しく撫でるいぬお。
小さく呟く。
「…必ず何とかしてやる。」
そう言った後、部屋を後にするいぬおはリビングへと戻った。
戻ってすぐに視線が合ったのはリューコ。
「いぬこはちゃんと眠ってる?」
「ああ。」
「そう…。」
言葉を交わした後でもリューコの表情はすっきりとしない。
罪悪感や迷いが漂っている。
「とりあえず、本題も話し終えたから、今回はここまでにして皆解散でいいだろ。」
空気を和らげようと椿が提案。
その提案に一同は頷きそれぞれが散らばる。
一人一人が複雑な心境の中、いぬおはツキノとシスティを呼び止めた。
「2人ともこれからどうするんだ?」
「どうする…ですか…?」
「それって…厄神に対して?とか?」
「ああ。それはそうだけど…。俺が言ってんのは、此処に住むかどうかだよ。」
いきなり来たツキノとシスティはゆっくり休める場所がない。
「……いやいや…ボク達元々客人ですし!」
「そうよ!いくら何でも図々しすぎるわ…」
「姉貴の事、助けてくれるんだろ?」
「それは…そうですが…。」
ツキノもシスティもいぬおの快い対応にたじたじ。
高待遇につき動揺を隠せずあたふたとしている。
「部屋はまた後々作るとして少し狭いだろうけどしばらくは俺の部屋を相部屋で使ってくれ。」
「そんな!悪いですよ!」
「いいから。それに…これからもっと世話になるんだから。これくらいさせてくれ。」
「………いぬおさん…」
「いぬおでいいから。これから頼むぜ。ツキノ、システィ。」
2人との交流を済ませいぬおが自室を後にした。
「部屋増設しないとな。」
「お前はいいやつだよな。」
不意に横から椿が話しかける。
「っ!?びっくりさせんなよ!」
「ははは!わりぃわりぃ。」
「相変わらずだな椿は。」
「なにがだ?」
「毅然としてるというか。どっしりと身構えてるっていうか。すげぇなってさ。」
バンっと背中に強い衝撃と共にケラケラと笑う椿。
「いっ…てぇ!!なにすんだよ!」
「お前もすげえよ。いぬお。」
「椿…。」
「実の姉が世界を滅ぼすって聞いてさ。普通なら冷静ではいられないだろ。お前は冷静でちゃんとしてた。俺はすげぇって思った。お前の方こそすげぇよ。」
「…………。冷静でいなきゃ取り乱してた。今も正直不安でしかねぇよ…姉貴が最悪死んじまったらとか助からなかったらとか…嫌のことばかり、考えちまうから。」
「じゃあ…今だけ。俺に甘えとけ。」
椿がいぬおを抱きしめる。
柔らかい感触と温かい。
人肌が体温がじんわり伝わる。
自然と涙が溢れ出してくるいぬお。
「素直になっとけ。今だけは、弱いお前を見せていいんだ。ガキになれいぬお。」
昔の母の記憶がうっすらと朧げに脳裏に映る。
「…………。」
「いぬおはよく泣くわね。よしよし…お母さんがいるから大丈夫よー…。」
「………お母さん…。」
いぬおはリビングのソファで目を覚ます。
「あれ?俺…いったい?どうしちまってたんだ?」
薄っすらと記憶をたどり整理する
だんだんと顔が紅潮しだす。
「俺、椿に抱きしめられたんだっけ…うわ…はず。」
それと同時に変に興奮。生理的現象が起きる。
「………最悪だ。」
いぬおは気晴らしのために外へ出て素振りを1000回行った。
「心頭滅却!心頭滅却!心頭滅却!!!」
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