第3話 神様
「
「宵依!ひさしぶりじゃねぇか!ええ?
元気そうで良かったぞぉ。」
比良じい もといこの人は比良山に棲む天狗
豪快な性格でたまに押しが強すぎるところがあるけど、とても強くてそして仲間と家族思いな人で湯屋のみんなに慕われている。
私も孫のように可愛がってもらっていて大好きな人
「どうしたの?今ひとの世界では
「そんなもんわしにかかりゃあうちわを一振よ。
それに人間を甘やかしてばかりもいれん!」
「手厳しいですな。比良殿。」
比良じいの隣に座っていた当主様がくすっと肩を揺らす
ちなみに――――
天狗のみんなはこの時期になると
――――気まぐれにだけど
飲んだくれた時に始まった葉団扇で颶風を誰が1番よりはやく遠くに飛ばせるかのゲームを宴会の度にしていたら人間から山の守り神と崇められるようになったのはここだけの話
「腐ってもわしらは今やもう神のうちの一人じゃ。
昔は飲んで暴れては自由に飛んだが、人間どもの崇めで得たこの役割も嫌いじゃあない。」
「……ってきっかけはただの勝負事だったんでしょ。
ほんとに都合のいいお人だ。」
「ガッハハ!結果よければなんでもいいんじゃ!」
「ふふっ。」
そうしてしばらく3人で談笑していたとき――――
「そういえば宵依、どうだ?少しは思い出せたか?」
「……実はまだ少しも。」
「そうか……。まあ焦るもんでもない!ゆっくりな。」
「はい!」
「…………。
比良殿、そろそろ3人だけというのもなんですし、
大広間に皆を集めますよ。」
「おぉお、いい案だ若旦那!よしっいこう!」
「では準備が整うまで風呂へどうぞ。
宵依、お前は先にお婆と宴会の支度を。」
「かしこまりました、若。」
2人にもう一度会釈をして、お婆のところに急ぐ
「お婆!若様が宴会の準備だって!」
「そう来ると思ったよ。宵依、ご苦労だったね。
それ着たままでいいから広間の方の準備を手伝っておくれ。」
「はい!」
お婆の的確な指示のもとテキパキと宴会の準備が進んでいく。
そして――
「比良殿、みな揃いました。どうか乾杯の音頭を。」
「よし!任された!」
比良じいが盃を片手に背を伸ばす
「今宵もまっことよい湯であった!
従業員たちもほとんど顔ぶれが変わらずいてくれて心から嬉しく思う。
先々代から続くこの逢来の繁栄が
…………乾杯!」
「「「乾杯!!!」」」
湯屋の日常 kno @hon23
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