彼方より見つめる四眼
①
怖い話が聞きたい?そうねえ…。なら私が小さい時の話がいいかな。知ってると思うけど私、高校までは山口の実家に住んでてね、かなり田舎だったの。村の周り全部山に囲まれてて、娯楽は少なかったけどみんな優しくていい村だったなあ。
ある時、たしか7歳ぐらいだったと思うけど山で遊んでるときに子犬を見つけて家で飼うことにしたの。でも叔父さんにすごい反対されちゃって。叔父さんは猟師だったんだけどそのせいか昔からの言い伝えってやつをすごい気にする人だったんだよ。田舎だからもともとそういう人達はかなり多かったんだけど叔父さんは輪をかけて酷かった。その反対する理由っていうのがむちゃくちゃで、その犬は目の上に斑点があって目が四つあるみたいに見えたんだけど叔父さんによると四ツ目の犬は飼い主を不幸にするとか殺すっていう言い伝えがあるみたいで。なんでかって?さあ。私もよく聞いてなかったし。多分、四が「シ」って読めるからなんじゃない?年寄りの迷信なんてそんなくだらないもんだよ。もちろんそんなバカな話無視したんだけど。元から変わってる人だったし。それにしてもしつこかったなあ。一年ぐらいはずっと言われたよ。
結果から言うと叔父の言うことはデタラメだったね。それどころかコタロウは私の命を助けてくれたんだよ。あ、コタロウってのはそのワンちゃんの名前ね。10歳ぐらいの時、そのコと一緒に友だちと山で遊んでたらいつのまにか奥の方まで来ちゃっててね。おまけに太陽も沈み始めてて。なにより家の村には、山には山の神さまがいるから深くまで入ってはいけない、ていう言い伝えもあってね。これは叔父だけじゃなくてみんないってたなあ。実際熊とかも普通に出たしね。
そんなわけでおびえながら急いで山の中を歩いてたら突然コタロウが吠え始めたんだよ。コタロウはいつも大人しくてめったに吠えたりしなかったのに。それで必死になだめようとしてたら鳴き声に混じってパキッ、パキッて枝の折れる音が聞こえてきたの。最初は遅くなっても帰ってこないのを心配した大人たちが迎えに来てくれたんだと思ってみんなホッとしてたんだけどソレが木の影から出てきて凍り付いたよ。ソレは村人じゃなかった。それどころか多分人でもなかった。クマ?ううん、絶対にクマでもない。あれが多分、山の神様なんだろうと思う。人間に鳥の羽を張り付けたみたいな姿をしていた。顔だけがきれいな女性のものだったのが逆に不気味だった。そいつが近づいてきても誰も動けなかった。もうダメだ、って思ったその時、コタロウがそいつに飛びかかった。その瞬間動けるようになって皆急いで走り出したよ。その後のことはよく覚えてないけどコタロウを助けるため大人たちが山に行ってくれたことは覚えてる。助けをよんだところでみんな倒れちゃって。
だからここからはあくまで聞いた話なんだけど、大人たちは大怪我をして蹲ってるコタロウを見つけてくれて連れて帰ってくれたみたい。傷跡は刃物とか牙でつけられたようなものじゃなかったって。コタロウは自分だって怪我してるのに、寝込んでる私の布団にきて何度も舐めたりしてたらしい。きっとそのおかげで無事だったんだと思う。友達はみんな目を覚まさずに死んじゃったから。
はい、話はこれでおしまい。なんか暗い話でごめんね。え?その事を聞いて叔父さんはなんて言ったかって?あー…実は叔父さんその二年前ぐらいに死んじゃったんだよ。あ、山の神様は関係ないよ?野犬に噛まれてね、傷跡から悪い菌が入ったみたいで熱が出てそのまま。あんまり好きじゃなかったけど流石に可哀そうだったなあ。四ツ目の犬に殺されるってずっとうなされてて。一応言っとくけど絶対にコタロウの仕業じゃないよ。そもそも傷跡からしてコタロウよりずっと大きい犬だろうし。結局叔父さん最後までコタロウのこと嫌いだったのは残念。あんなにいい子なのに…。それにしても懐かしいなあ。久しぶりに帰省しようかな。お母さんとお父さんはたまに来てくれるけどコタロウには一年ぐらい会ってないし。
昨夜、山口県長門市の山中で行方不明だった福岡県在住の木崎 真由さん(20)が全身から血を流して倒れているのが見つかり、死亡が確認されました。警察によりますと、遺体は動物にかまれたような傷があったということで、野犬に襲われたと可能性が高いとのことです。木崎さんは実家に帰省中でペットと散歩中の姿を目撃されたのを最後に行方が分からなくなっていました。
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