第3話 風邪をひいて
「大丈夫・・無理しないで、寝てていいから・・・」
優しい声で夫が囁いてくれた。
「うぅっ・・こほんっ・・・」
私の返事は咳でかき消される。
「ママ・・・?」
可愛い瞳が心配そうに見つめている。
「ごめんね・・・」
頬を撫でようとする手を小さな指がギュッとした。
「ねんね、ねんねして・・ママ・・・」
プリプリした唇から漏れる声にキュンとなる。
「そうだよ、ゆっくりお眠り・・・」
夫の声が遠ざかっていく。
あまりにも、幸せで。
あまりにも、あったかくて。
私は目を閉じた。
熱で火照った身体が心地良い。
喉は痛いけど。
今日だけは。
頑張らなくてもいいのかと。
ホッとしてしまう。
※※※※※※※※※※※※
(だめじゃない・・・)
心の中で責める自分がいた。
(もっと、がんばらなくちゃぁ・・・)
幼い頃から私を責め続けていた。
意味の無いモラル。
少しも応援ではない励まし。
※※※※※※※※※※※※
「ふふっ・・・」
思わずクスッとした。
風邪をひいて。
何もできなくなって。
ようやく気付いた。
そう。
頑張らなくてもいい。
頑張らなくても、いいのだ。
楽になるのは、罪じゃない。
それを責めるやつは・・・。
そう。
そんな奴には。
一言。
言ってやればいい。
く●、食らえ!
・・・ざぁます、と。
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