告白済みの女は明日からどう生きれば良いのかという問題

@pChron

バッテリーが切れる前には爆発して警告してほしいよねって話


送れてたらどうしよう、なんて言いながら、内心ではもう送れてる気満々だった。

だって、あのタップの感触。あれは確かに「送信」の手応えだった。物理的には。指的には。タップ感覚的には。


送れた。

そう、送れたのだ。わたしの告白は、彼のスマホに、今、届いている。


……という前提で、考えよう。明日からどうする?




【シナリオ1:向こうが何も言ってこない場合】


最悪である。

既読スルー。

冷戦。沈黙。あたしの存在、空気。


わたしは彼の視界の中で、わざとらしく立ち止まり、転び、教科書を落とし、「あっ……」っていうやつを三回やる。

それでも声をかけてこなかったら、もうそれは地球上に存在しないと思っていい。



【シナリオ2:向こうがニヤニヤして近づいてくる場合】


最悪である。

ニヤニヤ系は、告白されたときに「こいつオレのこと好きなんだぜ~」ってやつに進化する。

翌日からあだ名が「田中の女」になる。

あたしは恥ずかしさで気絶して、保健室に運ばれ、先生に「なんで顔が赤いの?」と聞かれ、「地球の酸素が濃すぎて……」とか言い出す。



【シナリオ3:向こうが普通に接してくる場合】


最悪である。

ということは、読んでない。通知スルー? 非表示設定? そんな機能あった?

つまり彼はあたしの気持ちを知らずに、いつも通り「おはよ」って言ってくる。

わたしは心の中で、地雷を一歩ずつ踏んでいる感覚になる。普通でいられるって、地獄。



【シナリオ4:向こうから返事が来る場合】


最高である。


でも、どんなテンションで来る?

「俺も実は……」って来たら、うっかりスクショしそう。

「ありがとう。でも……」って来たら、うっかりスマホ投げそう。

「既読だけついて返信なし」だったら、もう木に登る。枝に座って1日過ごす。



【準備すべき明日の行動】


髪は巻く。いつもより0.7周多めに。

メイクは濃すぎず、でも「今日なんか違うね」と言われたいレベルに調整。

昼食は食べない。胃が何かを受け付けない(という設定)。

田中を目撃した瞬間、視線を一度スルーしてから、戻す。(これ重要)





家に着いた。スマホはまだ沈黙している。充電は、ようやく5%。

画面を開くべきか。否。いま開いたら、もし未送信だったら、この妄想が全部無効になる。


だから、わたしは目を閉じる。

そして、明日のことを考える。


——もし彼が、何も言わなかったら。

——もし彼が、笑ってくれたら。

——もし彼が、「気持ち、嬉しかったよ」と言ってくれたら。


そのときは、わたしも、ちゃんと笑おう。ちゃんと、彼の目を見よう。


ちゃんと、恋をしよう。

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