猫と犬は愛入れる

悪ッ鬼ー

私は猫である


 私は猫である。

 女子校に通う、ごく一般的な高校生。最近女子の恋人が出来たということ以外普通の女子だ。


「ちょっとポチ、暑苦しい。離れて」


「えー、良いじゃーん。恋人になったんだしさぁー。ねータマー」


 教室のど真ん中で、本を読む私にしつこくベタベタとしてくる女の子。ポチがそうだ。

 名前は千穂。犬のような性格で、名前を逆にして”ポチ”そう呼んでいる。


「でたでた、また犬のポチがツンデレ猫のタマにちょっかい出してる」


 そして私は猫である――。


 恋人らしいことは未だ一切せず、私はポチと”女子同士の恋人”という

奇妙な関係になったものの、どうすれば良いのか分からないでいた。

 別にポチのことを意識していないというわけではない。むしろ、先程くっつかれた時、鼓動が増した。熱くなって、汗をかいて、臭いがバレるんじゃないかって不安にもなった。

 どうポチと恋人として接すれば良いのか分からない。だけど――。


「千穂、おはよー!」


「おはよー!」


 ポチの友人Aがポチに抱きつき挨拶をする。それを見た私は少しモヤッと心のノイズ。

 やっぱりそうだ。

 ――だけど、これだけは分かっている。


「ダメッ」


「あっと……。タマ?」


 私はその友人Aからすかさずポチを取り上げると、ポチの肩に腕をかける。まるで猫のような鋭い眼光はその友人Aに向けた。これは私のだと言い張るように。


「あちゃー、そうだった。珠さんの千穂だったね。こりゃ失敬」


 私は、ポチを他の人に取られたくない……!


「タマ、私にはくっつくなって。自分からはくっつくのズルい!」


「私のは良いの」


 これは他の皆への牽制なのだから。しかし、それにポチはプクッと顔を膨らませ、「だったら……」と、言葉をためると、肩にかけた私の腕をがっしりと掴みこう言った。


「これで逃げられないね」


 このやり返しがとても可愛い。もうずっとこのままでいたい。このまま二人だけの世界に浸っていたい。そう想った。


「はい、そこ席に着け」


「チッ――」


 その想いは、担任の発言によって粉砕された。

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