第八詩・正体不明の姉の顔

 あたしの顔の上にかぶさった弟の顔が何かを喋っている。

 あたしについて、喋っているとわかる。

 でも、弟が何を喋っているのかはわからない。


 あたしの顔と、弟の顔が生きている次元は違うのだから言葉は通じない。

 弟は、いまいましそうにあたしの顔を、皮膚の上から押さえて撫でる。

 あたしを異物のように扱う弟は、あたしの顔を裏側からナメる。


 ボクの頬の裏で姉の顔が何かを呟いている、姉の顔はボクの頬皮膚のすぐ下の裏側に浮かんでいる。

 舌で姉の顔を裏側から、いまいましそうにナメる。


 その日、あたしの顔と弟の顔が入れ替わった。

 あたしの顔が表側、弟の顔が頬の皮膚下に入れ替わった。

 いまいましい、弟の顔と入れ替わった。

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詩海文章〝クトゥルフ詩〟~死の星より森地の闇に降り立った者たち~ 楠本恵士 @67853-_-

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