第2話 ふしぎなこんび
『キシャアアアアア!!』
「な、なに?!あ、あれは??」
大蛇の機獣は奇襲を受け逃亡し、その位置には抱き抱えられる程度の大きさのものが浮遊していた。
「よーし、よくやったぞ!ぺむ!」
どこから現れたか1人の男が声を上げると、ぺむと呼ばれたその謎の物体は男の方へと向かう。様子を見るにそのぺむと呼ばれるものが機獣を撃退したことに間違いないようだ。
「大丈夫ですか?鎧を着ているし護衛の方のようですね。いやー、あんなデカイのに襲われるとは災難でしたなー。」
「な、あんた!あれは国を危機に晒すほどの機獣なのだぞ?!あんなのを倒すのが当たり前だと言うのか??」
「んー、俺は戦いは出来ないから無理ですなー。でも可能なんですねー。俺の相棒なら。」
男はぺむを抱き抱えオージョの方に向ける。それは白く、正面にはpmgのような文字で書かれた顔、脚部パーツはとんがりな形状をしており、どこかマスコットキャラクターのような印象を受ける。
仲間を失った今、オージョは下手に身分を明かさない方が懸命と判断し、お礼だけを言うことにした。
「助かった。1人のところをあんなデカイのに襲われてしまってな。君がいなければ私は死んでいただろう。」
「いえいえー。良ければ安全な場所までお供しましょうか?」
「いや、大丈夫だ。私はすぐに戻らなければならなくてな、これで失礼する。」
オージョは急いでその場をあとにする。本来は王女として彼とぺむと呼ばれるものを尋問するために連れて帰りたいところだが、今は兵士たちもおらず早急に国に帰ることを求められているためやむを得ず単独での帰還を選択する。
「いやー、不思議な女性だったなー。並大抵の機獣ならあっさり倒してしまいそうだ。なあ、ぺむ。」
ぴょこぴょこ。男の問いかけにぺむは空中で跳ねて応答する。そのまま彼女が歩く姿を見送っていると、何故か途中で足を止めた。
……道が分からない!!厳密には広大な砂漠に道は無いのだが、方角を間違えるとそのまま遭難しかねない。単独での帰還は危険と判断し、そのまま振り返りもう一度男の方へと戻った。
「……うん?なぜか戻ってきたぞ」
「すまない、このまま戻ろうとすると遭難してしまいそうだ。お供してくれないか?」
「あ、そう言うことですかー。いいですよ、一緒に行きましょう」
オージョは男と共に帰還することを選ぶ。その要求に、相手は快く了承してくれたようだ。
「助かる。私はオージョ。そうだな、砂漠を横断していたらデカイ機獣に襲われた者と言っておこう。」
「オージョさんか。俺はエム。エム・グルーペです。そしてこっちが相棒のぺむ。」
エムが紹介するとぺむはぴょこっと跳ねて返事する。お互いの自己紹介が終わるとエムは相手の目的地を尋ねる。
「それで、オージョさんはどちらへ?」
「こちらは助けてもらった身だ。呼びはオージョで良い。目的地はサカエール王国だ。」
「じ、じゃあお、オージョは、サカエール王国ってところに向かっているのね。まだ行ったことない場所かもなぁ。旅先に寄るにはちょうどいいかも。」
やはり、とオージョは思う。先ほど名前を明かした時に驚かれる素振りすら見られなかったので自分が王女であることは気づかれていないことを確信する。それどころか、1番大きいとされるサカエール王国を知らない様子だった。
「サカエール王国を知らないと言うことは、エムも目的の方角は分からないと言うことか。」
「確かに俺は分からないけど、ぺむなら方角を検索することが可能なはずなので大丈夫だね。」
「……そのぺむと言うのは、中々凄いのだな。不思議な存在だ。」
オージョは改めてぺむの方向を見つめる。それほどの力を所持するものは、この世界では機獣くらいなものだが、ここで聞き出すのは助けて貰った恩人に失礼なこと、兵隊がいない単独の状態での尋問は危険なことから、オージョは質問するのを堪えることにした。
「それでは、進みますかねー。」
「少し待ってくれ。鎧を脱いでから行くことにする。」
そう言うとオージョはその場で鎧を外し始める。鎧の下はかなりの薄着ではあるが、裸にはならないため機動性を重視し外すことにする。
「そんな凄そうな鎧、抜いじゃうんですな。」
「元々とある機獣対策で着ていたものだからな。少人数での移動なら外してしまった方が生存率が高まる。」
オージョは鎧を外し終わると、軽くなったとばかりに肩をくるくると回す。そのまま剣を持ち直すと、準備出来たとエムに話しかける。
「待たせてしまったな。行こうか。」
そのままエム、オージョ、ぺむは何事もなく砂漠を進む。しばらくしたら日が暮れ、辺り一面が暗くなった。
「これだけ暗いと進むのも危険だね。そろそろ野宿にしますか。」
「ああ、そうだな。どこか寝やすい場所があると良いが。」
「それならお任せあれ!ぺむ、寝袋を2つ出してくれ。」
ぺむはぴょこっと跳ねて要求を了承すると、ブルブルと震え出す。
「な、何をしているんだ??」
「ぺむには異次元収納装置があって、寝袋などの用品を中にたくさん収納しているのさ。それを取り出してる。」
しばらくするとどこかからか、寝袋が2つポンポンっと飛び出し、地面にドサッと落ちる。
これならどこを寝場所にしていても快適に眠れそうである。
「じゃ、ぺむ見張りよろしくおやすみー。」
「え、もう寝るのか??周囲の警戒は……」
オージョはぺむの方を見つめる。彼女はぺむに助けられた事実が存在するが、この大きさの物体があの巨大な機獣を撃退したことが未だに信じられずにいた。そのため、エムはぺむに見張りを完全に任せてしまったが、オージョは自分自身も見張りを行うことにした。
そんなオージョをぺむは不思議そうに見つめる。まるで寝ないのか?と言っているかのように。
「すまないな、ぺむ。私も機獣を相手にしてきたものでな、完全に頼りきりで寝ることなど出来ない。」
ここで完全に寝てしまうと敵の奇襲に気づくことが出来ないのもあるが、もう1つの理由が頭や体はすぐには覚醒しないため戦闘態勢を取る事が出来なくなってしまうためである。
オージョがぺむが向いている方向の反対を見張ろうとした時
『ギャアアアアアアア!!』
とても人間のものとは思えない叫びが聞こえてきた。
「これは、、機獣が襲ってきたか!!」
さいきょうAI ぺむ エムぺぐ a.k.a エノナイ @empeg
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