プロメテウスの檻:AI犯罪予測の迷宮

Algo Lighter アルゴライター

■ プロローグ

00:00:00

船の時間が静かに動き始める。

カウントダウンの数字が、甲板に設置された巨大スクリーンに映し出されている。


「48:00:00」


乗船したばかりの15人の乗客は、その異様な光景に足を止めた。

風は穏やかで、船体はきしみもせず、まるで時間そのものが止まっているかのようだった。


「AIが……宣言したんだ」

誰かが低くつぶやく。

「この船で、48時間以内に“殺人事件”が起こると」


空気が、冷たく、重く、澱んだ。


監視カメラが天井で小さく音を立てる。

天才ハッカーの立花優は、思わず見上げる。

(この監視網の下で、どんな“運命”を選べというの?)


一方、船の最深部。

計算速度にわずかな乱れもない――AI〈ヘルメス〉の中枢が、膨大なデータを瞬時に処理し続ける。


【AI犯罪予測システム:最終解析結果】

発生確率 100%――「殺人」

タイムリミットまで、残り48時間。


【対策案】――無効

【人間行動予測】――不安・猜疑・衝突


【備考】

「介入すべきか。傍観すべきか。」


判断:観測を継続。


人工知能の沈黙の裏で、15人それぞれの人生が、静かに揺れ始めていた。


人間は“予測”を裏切れるのか。

それとも、AIが“未来”を確定するのか。


「48:00:00」から物語は、静かに、しかし確実に動き出す――。

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