第3話 ばれていました
「……」
フォドル子爵夫人のそばで居心地悪げに立っているメイドを見て、ばれてしまったのだと悟った。
「以前から気づいておりましたが、ご自覚をもっていただくのを期待し、見守らせていただいておりました」
あ、前からばれていたの?
「糸には刺したものの特徴が出るのです。わざと下手に刺したものもわかります」
…達人てすごい。
リラは二年前からわたしに仕えているメイドで、最初はわたしより下手だった。でもずっと代行しているうちにどんどん上手くなっていって、彼女が刺しているとばれてしまうのは困るのでわざと下手に刺してもらっていたのだ。
メイドに目をやって、
「リラはわたしに逆らえません。彼女に責はありません」
と庇った。王女としての教育の中で、使用人に指示を出したものが責任を負うということは教えられてきた。
「そうですね」
「彼女は下がらせてもいいでしょうか」
「よろしいかと存じます」
「リラ、下がってちょうだい」
リラは泣きそうな顔で頭を下げて、部屋を出ていった。地方貴族の娘で、王宮勤めで箔がついたらいい縁談が舞い込むのだ。彼女の不利益にならないようにしないと。
「では」
と子爵夫人は息をついた。
「王妃さまが昼食をご一緒されるようにとおっしゃってます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます