第3話 ばれていました

「……」

 フォドル子爵夫人のそばで居心地悪げに立っているメイドを見て、ばれてしまったのだと悟った。

「以前から気づいておりましたが、ご自覚をもっていただくのを期待し、見守らせていただいておりました」

 あ、前からばれていたの?

「糸には刺したものの特徴が出るのです。わざと下手に刺したものもわかります」

 …達人てすごい。

 リラは二年前からわたしに仕えているメイドで、最初はわたしより下手だった。でもずっと代行しているうちにどんどん上手くなっていって、彼女が刺しているとばれてしまうのは困るのでわざと下手に刺してもらっていたのだ。

 メイドに目をやって、

「リラはわたしに逆らえません。彼女に責はありません」

 と庇った。王女としての教育の中で、使用人に指示を出したものが責任を負うということは教えられてきた。

「そうですね」

「彼女は下がらせてもいいでしょうか」

「よろしいかと存じます」

「リラ、下がってちょうだい」

 リラは泣きそうな顔で頭を下げて、部屋を出ていった。地方貴族の娘で、王宮勤めで箔がついたらいい縁談が舞い込むのだ。彼女の不利益にならないようにしないと。

「では」

 と子爵夫人は息をついた。

「王妃さまが昼食をご一緒されるようにとおっしゃってます」

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