第4話 酔いどれお泊り回

 初めて唇を重ねた二人は、唇を離した後もしばらく抱き合っていた。だが、いくらツツジが小柄で軽いとはいえ、さすがに桔梗の足がしびれてきた。そのことをツツジが察してようやく膝から降りた。膝から降りたツツジはテーブルの上においてあった酒をまた煽った。

 「えへへ…桔梗くん、ありがと!」

 「僕の方こそ…ありがとう…。」(めちゃくちゃ恥ずかしかったけど幸せだった…服越しなのにツツジちゃんの肌の柔らかさとか体温とか伝わってきて…ゆくゆくは素肌にも…イヤイヤ!?何考えてんの!…でも、ツツジちゃんの生乳触れたら…あ、…いかんまた勃ってきた…。)

 またしても活発になってしまった愚息をどうしたものかと考えた挙句に、桔梗はスクッと立ち上がり、「ちょっとトイレ…」と言って部屋を出ようとした。ツツジは「いってらっしゃ~い」といって何事もないように送り出すかに見えたが次の瞬間「あ、そうだ…」と思い出したように言った。桔梗が「?」と振り返ると、ツツジはニヤァっと昼間のようないたずらっぽい笑みをたたえたまま言った。

 「別に私覗いたりしないから、桔梗くん”ごゆっくり”ね…?」

 「!?//ちょ、ちょっとほんとにそろそろ漏れちゃいそうだから!!」

 ごまかしつつも、桔梗の愚息は割と限界なのであった。

 バタンとトイレの扉が閉まったのを確認すると、ツツジは自身のスマホのカメラを起動した。ちょうどそのころ、トイレの方から桔梗が気に入っている音楽が聞こえてきた。桔梗が暇つぶしでトイレにもスマホを持っていくことをツツジは知っていた。おそらく今日の目的は暇つぶしではなく、トイレの中のほかの音をかき消したいからだろうが…。それを察していたツツジはクスクスと笑いながら自身が着ていたシャツとハーフパンツを脱いで何枚か写真を撮った。メッセージアプリを開いて、固定連絡先で一番上にくる「桔梗くん(私の可愛い彼氏♡)」と登録されたチャット欄にいくつかの写真を張った後、メッセージを送った。直後、トイレの方からゴンッと重たいものを落とした音がしてから何か叫ぶような声がしてきたが、聞こえていないふりをしておいた。

 (やっぱり桔梗くんてカワイイ~!私の彼氏最強すぎんか…?)

 酒が回ってきたせいだろうか、いつもでは考えられないほど大胆になってしまった。声を押し殺して笑いながら、改めて服を着なおす。そこから桔梗は20分ほど部屋に戻ってこなかった。


 ツツジがこのような行動に出る少し前の桔梗視点はというと、トイレに入ってからすぐに動画アプリを開いて目についた曲を再生してから便座に座った。視線を落とすと、案の定自分の男としての部分は臨戦態勢だった。

 (やっぱりこうなってるよなぁ…このまま収まるまで待ったとしても、部屋に戻ってツツジちゃんに興奮しちゃってトイレに戻ってきてのイタチごっこになりそうだし…やっぱり抜いとこう…。)

 動画を再生しているスマホは左手に持って、右手で自らの愚息に触れようとしたとき、スマホの振動で一瞬思考が冷静になった。いつもの癖で通知をタップして飛ぶと、メッセージチャットにツツジからいくつか届いていた。

 開いてみると、下着姿のツツジが上アングルから自分の胸元を強調するように撮った写真や、胸元の下着を外して、腕だけで重要な部分を隠したもの、ほかにも、今日買ったと思わしきコンドームを一つ口にくわえて目元を手で隠したものなど、とにかく刺激の強い写真が送られてきていた。

 添えられていたメッセージには、

 『えっちはまだ駄目だけど、今日はいっぱいわがまま聞いてくれたから出血大サービス!これでいっぱいごゆっくりしてきてね♡愛してるよ~!』

 と書いてあり、思わず桔梗はスマホを落とした。それから

 「ちょっとツツジちゃん!?何してんの!?」

 ほぼ絶叫に近い声で言ってみたが返事はない。そして写真のインパクトから、なおさら桔梗の桔梗は臨戦態勢を強めることになるのであった。結局収まらなくなってしまった桔梗は、そのまま一人で20分ほどトイレから出ることができず、完全に収めるまで何がとは言わないが2回を要したのだった。


 写真とメッセージを送って絶叫が聞こえた後、ツツジは恋人のいる女友達に電話をかけていた。以前から交友があったのもあるが、桔梗から付き合った当初から、電話相手の友達は良き相談相手であった。

 『もしもしツツジ?どうかしたの?』

 「あ、胡蝶(こちょう)ちゃん?ちょっと聞きたいことがあるんだけど…?」

 『なにぃ?』

 「男の人って一日に何回ぐらいできるのかな…?」

 一瞬の沈黙があったのち電話の向こうから「はぁ!??!!?」っという絶叫が聞こえてきた。

 『え…ツツジあんたもしかして今夜…ヤるの…?』

 「ううん…私がビビっちゃって今夜はお預けにするってことにした…けど、桔梗くん今トイレ行っちゃったからこんなのおくったの」

 桔梗に送った写真を電話相手の胡蝶にも送る、再びしばらくの沈黙があったのち、写真を見たらしき桔梗の絶叫がまた電話越しに聞こえてきた。

 『え!?え…!?ツツジあんた…こんなえっろいの桔梗に送り付けたの…?いや、つうか…でっか…』

 「さっき、トイレの方からスマホ落としたらしき音と桔梗くんがなんか叫んでたけど聞こえないふりした!」

 『いやこんなん…シ〇りにイッた矢先にこんなけしからん乳送り付けられたら驚くでしょ…。』

 包み隠さずにドストレートに桔梗の行動を言い当てる胡蝶。この遠慮のなさが、ツツジを始め多くの友人に囲まれる理由でもあった。

 「それでさっきの質問に戻るんだけど…男の人って一日に何回くらい…その、できるのかなって気になって…」

 ツツジが真面目に聞いているのを察したのか、胡蝶は『う~ん』と少し考える様子を見せた後口を開いた。

 『うちの、バカレシはだいたい…3回…くらいかな//体調によって変わるみたいだけど…平均は多分それくらい//というかこれぐらいじゃないと私が持たないよぉ…//』

 電話の向こうで、少しづつ胡蝶が赤くなっていくのがわかった。

 「ま、まじか…胡蝶ちゃんでもそんな感じになっちゃうんだ…私も覚悟決めないと…!」

 新たな決意を胸にした後、ツツジは胡蝶に一言二言アドバイスをもらったのち電話を終えた。ちょうど電話を切ると、トイレの方から水を流す音がして、次いで洗面台で水を流す音がした。そして、やや大きめの足音が部屋に向かってきたかと思うと、やや強めに部屋のドアが開かれて桔梗が「ツツジちゃん!?」と鼻息荒く入ってきた。

 「あ~…桔梗くんのお帰りぃ~」

 電話しながら待っている間もツツジの酒は進んでいた。少しふわふわとした話し方になっていた。そのような状態になったツツジの両手首を桔梗がつかみながら畳に押し倒す形になった。少しだけ顔が赤くなったツツジだが、酒で気が大きくなっているのか、はたまた桔梗への信頼からか、思考は冷静だった。

 「あぇ…?もしかして私このまま桔梗くんに襲われちゃう…?」

 クスクスと笑いながらツツジは桔梗に語り掛ける。桔梗は、鼻息は荒いとはいえ、その目つきは落ち着いており、理性がしっかり働いていることがうかがえた。

 「…襲わないよ…ツツジちゃんに嫌われたくないもん…。」

 先ほどの心の準備ができていないという話をこのような状況でも配慮してくれていることに一層ツツジの桔梗に対する愛情が深まった。

 「さっきの話、ちゃんと汲んでくれるんだね。ありがとう!そういうところも大好きだよ?」

 つかんでいる桔梗の手が緩まったと思うと、ツツジは両手をまた桔梗の頭の後ろに回し、抱き寄せるように桔梗にキスをした。今度は先ほどよりも長く、互いの唇の形や感触を確かめ合うかのようにゆっくりとである。ようやくツツジが桔梗を離したとき、またしても桔梗の顔は朱に染まっていた。

 「きょ、きょういちにちできすしすぎじゃない…?//」

 あまりの出来事に話し方がふわふわし始めてしまった桔梗に対して、ツツジも顔を少し赤くしながらもくすくすと笑いながらまた返す。

 「今までできなかった分だよ!まだまだチューもハグも足りないし、大好きも言い足りないよ?」

 桔梗に引き起こしてもらいながら、二人して座りなおす。かと思いきや、胡坐をかいて座った桔梗の膝の上にまたツツジが乗っかり見つめ合う体制になった。そうして、ますますツツジのテンションは上がり続けていく。

 「そういえば話し戻すけど、さっき送ったエッチな写真気に入ってくれた?」

 これを聞き、桔梗の顔が今度は耳まで赤くなっていく。「えっと…」と言って顔をそらそうとすると、ツツジが桔梗の両頬に手を当てて目を合わせるようにした。

 「目を背けないではっきり言って?気に入らなかったならもうしないし、仮にもし…その…//桔梗くんがあの写真で…シ、シ〇シコしちゃったとしても私は怒らないから…//」

 ツツジがかなりストレートに言うと、桔梗は目だけでもと逸らしながら口を開いた。

 「しょ…正直めっちゃ好きでした…。と、というか…2発抜いちゃったし…」

 ごにょごにょと話す桔梗の言葉をツツジは聞き逃しておらず。顔は赤いが、満足そうにニヘッと笑った。

 「へ、へぇ…あの写真で2回もしてくれたんだぁ?(あれ?胡蝶ちゃんは2回か3階が相場みたいなこと言ってたよね…?)ちなみに今日だけで私で何回抜いたの?」

 ツツジの問いに、桔梗は一瞬ためらったものの、少し間をおいてから「…ゴメンナサイ…4回抜キマシタ…」と片言で答えると、少しだけ時間をおいて、ツツジの顔がボッと火が付いたように再度真っ赤に点火した。

 「よ、4回…!?わ、私でその…4回もえっと…しゃ…〇精してくれたってことだよね…?」

 「ハイ…ゴメンナサイ…」

 恥ずかしさと、桔梗の体力に驚いて顔が赤くなっていたツツジだが、赤い顔のまま何か良からぬことを考えたのか、またいたずらっぽい笑みをたたえて、また口を開いく。そして、ツツジの一言は確実に桔梗のメンタルを抉っていった。

 「ちなみに、どの写真が特にお気に入りだったの?ほかにはさっきの2回以外にはいつどんな風にシた?私とどんなことするシチュエーション想像して射〇しちゃったの?」

 「えぇ…!?そこまで言わないとダメ…?」

 「うん!ダメ!ほらほらぁ!桔梗くんの中で私はどんなふうにメチャクチャにされてたのかなぁ?正直にお姉さんに言ってみなさい?」

 妖艶な雰囲気を出しながら赤ら顔で桔梗に迫るツツジ、酒が入っているのもあって普段絶対にありえないほどツツジは大胆になっていた。ツツジ本人にもそれはわかっていたが、酒の勢いと桔梗への愛情があふれてしまったツツジにもう「ブレーキ」の文字はなかった。

 それから桔梗はツツジに今日一日でツツジに興奮したタイミングや気に入った写真、風呂やトイレで致した際の妄想の内容などを詳細に語らされた。大方聞き終えると、ツツジは目を細めて満足そうに笑った。

 「へぇ~桔梗くん、私のことそんな風に見てたんだぁ~…えっち!」

 「えぇぇぇ!?ちゃんと正直に言ったのに…」

 「うん!正直に言ってくれたのは嬉しいよ?それに、桔梗くんがヘンタイでも私の愛は変わらないよ?」

 ハツラツと笑いながら、桔梗の背中に回している自身の腕の力をツツジは強める。一層密着したからだから、互いの体温が伝わってきた。

 「ひゃ!?ツツジちゃん!?」

 驚く桔梗をよそに、ツツジは桔梗の耳元まで顔を寄せると、囁き声で話し始めた。耳に吐息がかかった桔梗の肩がビクンと跳ねる。

 「ビクッてして可愛いね桔梗くん…。こんなのも好き?」

 「す、好きだけどこれはさすがに刺激強すぎ…!」

 「そぉ?まだまだいっぱいやるよ?何言ってほしい?」

 「そ、そんなん…ない…!」

 せめてもの強がりとばかりに口先で抵抗する桔梗だが、逆にそれがツツジの中のいとおしさを加速させた。さらなる愛情と少しのいたずら心で、ツツジはどんどん勢いづく。

 「じゃぁ勝手に思い付きでいうよ?…桔梗くんのヘンタイ…えっち…すけべ…私みたいなちっちゃい女の子に興奮するロ〇コン…そのくせ私のおっぱいに釘付けのおっぱい星人…また私のお股に硬いの当たってるよ?こんなのにも興奮しちゃうの?やっぱりヘンタイさんだね…!でもそんな桔梗くんも私は大好きだよ…!桔梗くん好き好き好き!大大大大大好き!」 

 ツツジの怒涛の囁き攻撃に初めは「や…ちが…僕はそんなんじゃ…」と抵抗していた桔梗も終盤は目じりをとろんとさせて、もはや抵抗できなくなっていた。そして、力が抜けた桔梗は、後ろに仰向けになるように横になった。そんな様子を、桔梗の腰の上あたりに座りなおしたツツジは面白そうに、そしていとおしそうに見降ろしていた。

 「あはは!力抜けちゃった桔梗くんもカワイイねぇ!またやってほしい時はいつでもやってあげるよ?」

 余裕の表情のツツジの顔を見て、桔梗の中にもさすがにやり返した意欲が出てきた。そして、おもむろに起き上がると、テーブルの上に半分ほど残してあった缶の酒を勢いよく煽ると、小さくげっぷが出てから、据わった目でツツジを見てから、空いていた右手でツツジの顎に手を添えて、両頬を指で固定する感じでつかんだ。

 「あれぇ…?あの桔梗くん?なんだかちょっぴり目つきが怖いんだけど…もしかして怒った…?」

 さっきまでされるがままだった桔梗の変貌に、ツツジは面食らったようだった。

 「ううん…怒ってないよ」

 ほっとした表情を浮かべたツツジだが、桔梗は一瞬考えるそぶりを見せて再度口を開いた。

 「ごめん、ちょっと嘘。少しだけ怒ってる。こっちが襲わないからってツツジちゃんさぁ…。僕のこと誘ってるよね?もしそうならお望み通りこのまま明日のデートつぶすつもりでぶち犯すけど…?」

 痛くない程度に顔をつかんでいる右手に力を入れて、一方の空いている左手をツツジの尻の方に伸ばした。身長に似合わないほどではないが程よく肉付きのある尻はハリがあって柔らかかった。予想外の反撃に今度はツツジが「ひゃん!?」と声を上げてから申し訳なさそうに言った。

 「ぶ、ぶち犯…!?ご、ゴメンナサイ…あんまり桔梗くんがかわいかったから…。シてはみたいけど……やっぱりまだ恥ずかしい…」

 ツツジの返答に桔梗は聞き終わってから少し申し訳なさそうに笑った。

 「えへへ…さすがにそうだよね…僕も勢い余って言っちゃったけど、今日はもうあと一回くらいしちゃったらもうできそうにないし…ツツジちゃんの気持ちを優先したいから、僕たちらしいペースで…ね?」

 「うん…ありがと!」

 ツツジもつられて笑った。このまま和やかに終わるかと思ったが、再び、桔梗が座った目に一瞬だけ戻った。

 「でも、やられっぱなしは悔しいから、やり返しだけさせてね?」

 「やり返し…?桔梗くん何を…~~~~~~~//!!??!??!」

 ツツジが警戒するより先に、先ほどまでツツジの尻を揉んでいた桔梗の左手が後頭部に来たかと思うと、そのままグイッと引き寄せられ、桔梗からキスをしてきた。それだけで終わらず、次の瞬間ツツジの口の中に柔らかかくて温かい、若干の甘い酒の味がするものが入ってきていた。

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メンヘラ(?)彼氏でごめんなさい! 刀丸一之進 @katana913

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