ヒナの夢
淡野こはく
第1話 ヒナの夢
そのヒナは、生まれたばかりだった。
気がつくと、ヒナは高い木の上で青空を見上げていた。
大きな影がヒナを覆い尽くす。
一斉に、周りの兄弟が口を大きく開けた。
ヒナもつられて口を開く。
お母さんが、食べものをくれるのだ。
ヒナは少し遅れてしまったので、食べ物はもらえなかった。
ヒナは、次はお母さんが来たら、一番最初に「おかえり」と言って口を開こうと思う。
そしてヒナはまた、眠りについた。
ヒナは夢を見ていた。
お母さんと一緒に空を飛ぶ夢だった。
太陽がまぶしい。そして温かい。
地面がとても小さい。
でも、不思議と怖くはなかった。
そこでヒナは目が覚めた。
風が少し出て来た。
風が吹くたびにヒナはお母さんが帰って来たと思い、その大きな口を開いた。
でも、そこにはお母さんの姿はなかった。
ヒナはがっかりした。
そして、ヒナはまた眠りにつく。
夢の中では、お母さんの温かいお腹の温もりを感じられていた。
それは他の兄弟たちの温もりだったのかもしれない。
それでもヒナはそう信じていた。
ヒナは今度はお母さんを探す夢を見る。
木の枝に留まって、お母さんを探す。
深い森だった。
暗く、深い闇にお母さんを探す。
でも、どこにいなかった。
ヒナは怖くなった。
その時、大きな音がした。
「お母さん!」と思いヒナは大きな口を開けた。
お母さんが、食べ物を入れてくれた。
お母さんがくれた食べ物。
それは、大地の匂いがした。
そして、すぐにお母さんはまたいなくなった。
ヒナは「お母さーん」と呼ぶ。
それは、おそらく声にはなっていないだろう。
それから、ヒナはもう随分とお母さんにあえてなかった。
そんな気がする。
明るい空と暗い空が何回か交互に変わった。
ヒナはお腹が減っていた。
それは他の兄弟も同じだった。
お母さんは帰ってこない。
樹木の葉っぱがサラサラと木漏れ日をヒナに注ぐ。
もうすぐ、お母さん、帰ってくるわ
そう言っているようだった。
すると、お母さんが本当に帰って来た。
ヒナと兄弟は食べ物をもらおうと口を大きく開けた。
ヒナは食べ物をもらえた。
幸せの味がした。
それから、またヒナは夢を見る。
今度は自分がお母さんになって、子供たちを育てている夢だった。
食べ物を見つけるのは、大変だ。
なかなか見つからない。
そして「怖い他の動物に、怖いことをされる。」
そんな夢だった。
ヒナは目が覚めた。
お母さんが、怖いことになっていないか心配だった。
ヒナは、早く大きくなって、お母さんから、食べ物をもらわなくてもいいように、お母さんに苦労かけないようにしたいと思った。
そう思いながら、またヒナは眠りにつく。
ヒナの夢が叶う日は近かった。
おしまい。
ヒナの夢 淡野こはく @awanokohaku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます